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中山七里作「護られなかった者たちへ」を読みました。

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中山七里作「護られなかった者たちへ」を読みました。いや驚く面白さでした。
さすがにどんでん返しの中山先生。転んでもただでは起きませんね。値段の分は
きっちりもとを取らしてくれる良著でありました。

小説の冒頭は、仙台市青葉区の福祉保険事務所から始まります。課長の三雲はい
つものように仕事を終え、帰宅するのですが、そのまま失踪してしまいます。半
月経って彼は変わり果てた姿でとあるぼろアパートの一室で発見されます。彼は
ガムテープでぐるぐる巻きに拘束され、そのまま餓死させられていたのです。と
ころが彼は非の打ち所の無い善良な人物でありました。全く動機が発見されない
のです。

次に同様の事件が起こります。被害者は県会議員の城之内です。この彼にも全く
動機が見当たりません。スキャンダルや裏金とは全く無縁の石部金吉だったので
す。彼も失踪後10日目に、無人の農機具小屋で餓死しているところを発見された
のです。この事件に際して、警察は、ついに二人の共通点を発見します。二人と
も、元は福祉保険事務所の職員でありました。

二人が同時に勤めていた福祉保険事務所に問い合わせますが、福祉保険事務所の
職員は素直にデータを寄越しません。あれこれ改竄したデータを寄越し、何かを
懸命に秘匿し続けます。

その頃、利根という男が8年間の刑期を終えて刑務所から出所してきます。彼の罪
科は、とある老人を巡って福祉保険事務所の職員と掴み合いになり、その建物に
放火して捕まったのです。ムショ帰りへの冷たい世間の目に耐えつつ、彼はしき
りに誰かの行方を探しています。それは上崎、という男でした。刑務所内で知り
合った五代、という男の手を借りて、利根はついに上﨑の行方を突き止めます。

その頃、すったもんだの挙句、とうとう福祉保険事務所から隠蔽されていたデー
タが届きます。この間小説には、生活保護の現場についての詳細な書き込みがな
されます。三人の申請却下に遭った人物の名前がもたらされます。そのうちの一
人と利根の名前がつながるのです。しかもその当時、上﨑もまたその福祉保険事
務所に勤めていました。捜査本部は利根を犯人と見て追い始めます。

折から上﨑は、東南アジアで買春ツアーに出掛けていました。おそらく利根が上
﨑の元に現れると踏んだ捜査本部は上崎の帰国に合わせて仙台空港を見張ります
。その空港についに利根が現れるのですが、よくあるミステリと思わせたこの小
説は、中山先生の得意技、劇的なまでのどんでん返しを見せ、驚きの犯人が名指
されるのです。いや、中山先生さすがです。素晴らしいミステリ小説でありまし
た。おすすめです。






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by rodolfo1 | 2018-03-03 02:08 | 小説 | Comments(0)
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