母が殺された――その悲しみの葬儀の席で逮捕連行されたのは、弟だった。
大企業勤務のエリートサラリーマンの父、良妻賢母を絵にかいたような料理上手の母、幼いころから両親の期待を一身に背負い、溺愛されてきた弟、そして彼らのなかで、ひとり除けものであるかのように成長した主人公、葉山和弘の一人称で小説は進行します。
桂先生の作品を初めて読みましたが、これは出色。なんでも県庁の星、を書いた作家さんだとか。まずつかみがOK。小説に出てくる家族は、かなりの部分に問題のある一家であると思われます。その後の裁判を通して、次第に父と長男とは心を通わせあい、長男は次第に自分の失ったと思っていた自らの立ち位置を、家族の中に取り戻していくわけです。
裁判で語られる殺害の模様から、殺人という非情な行為に幾許かの救いが見て取れますね。表題も大変にうまい。感心しました。おすすめです。
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