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アゴタ・クリストフ。悪童日記を読みました。

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衝撃的な小説です。フランスにおいても、日本においても、この小説は、
出版社に持ち込まれて出版されたとか。大した力量だと思います。本編は、
細かい短編から構成されていますが、テーマは強固です。第二次大戦時の、
ハンガリーにおいて、疎開して来た双子の日常を描く小説。

過酷な日常に投入された双子たちは、それでも自分たちのポリシーを貫き、
体を鍛え、勉強し、悪童と呼ばれながらも正義を執行しようとします。
ストーリーに沿って展開する各章はしばしば 、重いテーマを孕んだ状況設
定になっています。

死 、安楽死 、性行為 、孤独 、労働 、貧富 、飢え 、あるいはまたエゴイスム 、
サディスム 、いじめ 、暴力 、悪意 、さらには戦争 、占領 、民族差別 、
強制収容 、計画的集団殺戮など 、普遍的なものであれ 、歴史的色彩の
濃いものであれ 、シリアスな問題が物語の随所に仕込まれています。

いずれの問題に対しても、結束する双子は、クリアしていきます。
その過程で、双子の周囲の人物たちは、本性を表します。双子に親切
だった司祭の女中は、連行されていくユダヤ人に酷薄な扱いをして、双子に
断罪されます。

酷薄であった祖母は、衆目に逆らい、ユダヤ人に隠していたりんごを与えま
す。さまざまな人種が混交して生まれる到底日本人には書けない小説。ラス
トは、主人公たちが、離れがたい双子であることを遺憾なく伏線回収した素
晴らしい出来。いくつかある読まねばならない小説のひとつ。
北回帰線を髣髴とさせる猥雑な模写も存在するけれども、全く違うオリジナル
な小説。大変なお勧めです。


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by rodolfo1 | 2015-03-07 06:53 | 小説 | Comments(0)
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