アリステア・マクラウドの冬の犬を読みました。

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生涯にたった30編しか小説を書かなかった、アリステア・マクラウドの短編集を
二冊に分けて出版したものの後編です。

舞台は、スコットランド高地からの移民が多く住む、カナダ東端の厳冬の島、
ケープ・ブレトンです。彼らはもともと18世紀から19世紀にかけて、クリア
ランスと呼ばれる大移民によってこの地にたどりつきました。その移民は、
もともとスコットランドがイングランドに吸収される際に、スコットランド
国内が二つに割れ、熾烈な戦いを経て、負けたハイランド住民がスコットラ
ンドを追われ、イングランドや北米、オーストラリアに追放されたことに始
まります。

その後の、羊の牧畜業の繁栄により、小作民や住民が、家を追われ、この民
族移動に追随した、という経緯がまずあります。作者、マクラウドも含めて
小説の登場人物は、みなこの移民、という属性を負わされています。収めら
れた短編は、みな悲しいものです。たいていの小説に犬が登場します。

ここでは、その代表として、短編集の表題ともなった冬の犬、を紹介します。
ケープ・ブレトンに住まう貧しい一家が、牧羊犬として、犬を購入します。
その犬は、結局牧羊犬としては全く役立たず、ただ、怪力を利して、いろ
んなものを運搬したり、そりを引いたりして日常を送っています。

その家の息子は、ある日、犬ぞりを駆って、流氷の海に出て行きます。そこ
で凍ったアザラシを見つけた息子は、アザラシをそりにのせてもって帰ろう
としますが、氷の裂け目に落ちてしまい、あわや死にかけます。

そこで犬は、息子を海の中から助け出し、無事生還するのですが、その事を
恥として、誰にも事情を打ち明けませんでした。その後、父親は、友達に頼
んで、その犬を銃で撃って殺してしまいます。犬は無残な死に方をします。

というのも、その犬は、家畜や子供を襲う悪い犬に育ってしまったからだっ
たのです。息子は、命を助けてもらった犬の死に目に立ち会います。小説は、
一時が万事このような切ない調子で進行します。唯一救いがあるのは、短編
「島」でしょうか。あとはみな、移民と犬を巡る切ない物語ばかりです。

世界は広いです。スティーグ・ラーソン作、ドラゴンタトゥーの女を読んだ
時もそう思いましたが、世界にはユニークな物語を語る気鋭の作家さんがい
っぱいいるのですね。大変なおすすめです。是非お読みください。


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by rodolfo1 | 2015-05-13 02:35 | 小説 | Comments(0)
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