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宮尾登美子「陽暉楼」を読みました。

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宮尾登美子「陽暉楼」を読みました。
うちの連れはこの小説の30年来のファンで、90回近くは読んでいる、ということ
です。今年、生まれて初めて高知に行って、憧れのかつての陽暉楼、現、得月楼
にお邪魔しまして、そのたたずまいともてなしに大変感心しました。

ということで、生まれて初めて読みました。宮尾先生の父上が、この陽暉楼の芸
妓の口入屋をしておられた、というのは有名な話で、そうした関係で宮尾先生
は、陽暉楼とその周辺の花柳界についてお詳しいのかと思ったら、後書きで書か
れていますが、仕事の話を家ですることはなく、先生は陽暉楼に入ったこともな
かったそうです。すべて取材だそうで、取材だけでこれだけの小説を物されたと
はすごい話だと思います。


小説の成り立ちはよくある物語です。貧しくして生まれ育った房子は、親に売ら
れて舞妓修行に入ります。入った置屋は、当時土佐一番の威容を誇る陽暉楼の抱
え置屋でした。生まれ持った芸事の才能を開かせ、陽暉楼一の踊り手と目されま
すが、実生活ははなはだぱっとしません。

悪いことを一切しない代わりに自己主張もろくろくせず、控えめに暮らしてい
る房子は、芸妓になって初めて客に恋をし、おまけに妊娠までしてしまいま
す。ライバルの芸妓胡遊は良い事ずくめで花柳界を昇っていくのに比べ、そこ
から転落していく房子の物語を、豪奢を極める陽暉楼を舞台として、そこに出
入りする華やかな花柳界の人々や客たちの繰り広げる、今は失われつつある花
柳界文化を、絢爛豪華な宮尾先生の文体で彩った日本文学のひとつの高み、と
目される小説です。

病院で、苦しみに耐えながらも、誰をねたむこともそねむこともなく、素直に
将来の事を考えて闘病していた房子の心根がとてもあわれでたまりません。大
変なおすすめです。いくつかのサイトを検索してみても、これだけの有名な小
説であるのにわずかしかレビューがないのは大変もったいないと思います。名
作は永遠に語り継がれるべきです。

ちなみに、これが房子さんこと桃若さん。お美しいですね。
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桃若さんのライバル。胡遊さん。やはりお美しいです。
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by rodolfo1 | 2015-07-29 02:06 | 小説 | Comments(0)
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