篠田節子作「長女たち」を読みました。

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篠田節子著、「長女たち」を読みました。
短編三部作からなっています。二編は家に残って母と暮らす長女の話。一編
は家に残ることを拒否して外国で暮らすことを選んだ長女の話です。いずれ
も医療と介護が深く関わっています。

第一作は家守娘という題です。長女はキャリアウーマンとして働く独身女性
です。妹は結婚して家庭に入っています。一緒に暮らしていた母は、認知
症が出て次第に錯乱していきます。仕事を辞めて介護せざるを得なくなっ
た長女には、様々な苦難が降りかかってきます。ここらはよくある話です。
最後にちょっと救いが見える展開になりますが、何せ2008年に上梓され
た話ですので、詰めに甘いところがあっても仕方がないかもしれません。
その頃は介護の実態についてはまだまだ誰にもわからない時代でしたから。

第二作は、ミッション。篠田先生得意の異邦人ものです。医師として海外
で働く主人公は、前任者と共に、苛烈な環境の中で暮らす原住民の生活を
改善しようと尽力するのですが、その環境に適応し、介護と医療を必ずし
も深く必要としていないで、それなりに充足している現地の状況の前に打
ちのめされてしまいます。重いテーマのお話でした。

第三作は、ファーストレディです。名家の実家で暮らす独身の主人公は、
地方の名士である開業医の父親の代理で色々な行事に参加し、ファース
トレディと呼ばれています。本来ならばその役を務めるべき母親は、糖
尿病を持つ身にも関わらず、ひたすら暴食し、どんどん病状を悪化させ
ています。その原因は、ただの庶民であった母親が、名家に嫁いだため、
またデジタル環境に適応できなかったため、周囲と相いれず孤立してい
った、という事です。

とうとう腎臓を病み、透析を受けるようになった母親は、娘からの生体
腎移植を望むようになり、そのやり取りの中で、娘は母親の娘に対する
考えに反発し、ついに自立を決意するに至ります。

三編とも、介護と医療に関する深い洞察と研究があり、なるほどと思わ
せる仕上がりです。篠田先生の筆力は全く衰えていません。今も全くの
現役作家を貫いておられると思います。長編で無かったのは大変残念で
すが、良作だと思います。

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by rodolfo1 | 2016-01-25 02:31 | 小説 | Comments(0)
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