岩城けい作「Masato」を読みました。

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『さようなら、オレンジ』から2年。待望の新作長編が出版されました。真人
(masato)という名の一人の少年とその家族の物語です。真人は、父親の転勤
にともない、家族全員で日本からオーストラリアに住むことになりました。お
姉さんは日本人学校に通い、大学は日本の大学に通学することを予定していま
すが、masatoは現地の公立小学校の5年生に転入したのですが、英語が理解
できず、クラスメイトが何を話しているのか、ほとんどわかりません。

向こうの習慣もわからず、母親は全く英語が話せません。いじめっ子のエイダ
ンと何度もケンカをしては校長室に呼ばれ、英語で弁解できず鬱々とした日々
が続きます。そんなある日、人気者のジェイクにサッカークラブに誘われた真
人は、ついに自分の居場所を見つけます。

一方、真人の母親は、異文化圏でのコミュニケーションの難しさに悩み苦しん
でいました。しかもmasatoはやんちゃです。いじめに負けず、度々エイダン
ともやりあい、たんびに校長室に呼び出されては、母親に謝らせる毎日ですが、
その中で次第に英語を覚えて現地に立場を作って行きます。

ここらからはオーストラリアの面目躍如となりますが、なかなかコミュニケー
ションの取りにくいmasatoへ教師や友達だちは果敢にアプローチします。特
に彼の転機となるのが、学校で催された劇に、masatoは、セリフは無いもの
の、かなり重要な役どころを割り当てられ、彼は結果名演し、拍手喝采を浴び
ます。

オーストラリアに馴染んできたmasatoは、現地の子供といろんな楽しい企画
に参加することになり、日本語の勉強がうっとおしくなるのですが、ますます
孤立を深める母親は、次第に父親とも疎遠になり、最後は日本に帰ろうとしま
す。masatoは帰りません。独自に卒業後の進路を13歳にして決定し、父親も
それを最後には認めます。

父子と母娘は別々の暮らしを選ぶのですが、最後、卒業パーティーで母親の出
したあるもののお陰で、暗かった母親の人生にも少し明かりが見えます。その
明かりも、いかにもオーストラリア気質の横溢したものでした。ものすごく短
い小説ですが、話運びがなかなか巧みでもあり、半日で読んでしまいました。
さすがに「さよならオレンジ」の到達点には至りませんでしたが、日本とオー
ストラリアを巡るさまざまな事情を鋭く描いた大変良い作品だと思いました。


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by rodolfo1 | 2016-03-19 02:35 | 小説 | Comments(0)
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