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恩田陸作「蜜蜂と遠雷」を読みました。

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本年度直木賞受賞作、恩田陸先生の「蜜蜂と遠雷」を読みました。
恩田先生は既にして人気作家さんです。ミステリ、ファンタジーなど作風は
多岐に渡り、大活躍されているのに今更直木賞ですか、と聞きたくなります
が、かの向田邦子先生にも同様の受賞がありましたので、直木賞とはそうい
う賞なのだと思えば受賞に納得も行きますね。

さて、小説は青春ファンタジー小説です。テーマはピアノコンクールです。
冒頭の部分はコンテスタントの紹介と扱う楽曲の名前が網羅されます。この
あたりから既に実際コンクールを聞いている気分に浸ります。芳ヶ江国際ピ
アノコンクールにさまざまなコンテスタントと審査員が集まります。

まずオ−ディションが行われ、候補者を絞るのですが、パリ会場では大変な
コンテスタントが現れ、審査員が大揉めに揉めます。一人の全く無名の少年、
ジンが現れ、彼は世界的なピアニスト、ユウジ・フォン・ホフマンの紹介状
を持参します。その紹介状には「彼を世界へのギフトとしてお送りする」
と書いてあったのです。

ジンの演奏は、審査員たちにとってあまりにも革新的なものでした。
何人かの審査員は彼に嫌悪感を抱きますが、結果的に彼を日本に送り出しま
す。日本では、何人かの個性的なコンテスタントが揃います。亜矢は、幼い
頃、天才ピアニストとして母に支えられて多くのコンサートをこなしていま
した。ところが母が夭逝してしまい、彼女はモチベーションを失って音楽か
ら離れてしまいます。

そんな彼女はとある音楽大学の学長に見出され、大学への入学を許され、そ
の恩義を返すべく、このコンテストに参加するのですが、当然彼女は尻込み
しています。強いコンテスタントではなく、全くの素人が参加しているよう
な有様だったのですが、そんな彼女を後押しするのが少年ジンや、幼馴染の
マサル、社会人からコンテスタントになった明石らの素晴らしい演奏であり
ました。

そんな亜矢を見守るのが親友の奏です。コンテストが進んで行くに連れ、天
才たちの化学反応が始まり、お互いがお互いを高め合う様は大変読み応えが
ありました。ジンは、師匠のホフマンに「音楽を外に連れ出してくれ」とい
う付託を受けています。ジンは自分の音楽に聴衆を引き入れ、聴衆を連れて
コンサートホールから連れ出す事を考えており、亜矢にもそれを求めます。

コンテストが進んでいくうちに変わって行く亜矢。ただの素人ピアニストに
なりさがっていた彼女は、次第に偉大な音楽家として目覚めて行きます。
音楽が人を変える様を的確に描写した、大変良く出来た小説だと思いました。
直木賞は当然です。おすすめです。

この本を読んで以降、私はクラシックが趣味の一つとなりました。この書評
以降の私のクラシックに関するアップロードは、全部この小説の影響です。

そのくらい衝撃的な小説でありました。

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by rodolfo1 | 2017-01-29 02:27 | 小説 | Comments(0)
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