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佐藤正午作「月の満ち欠け」を読みました。

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第157回直木賞受賞作、佐藤正午作「月の満ち欠け」を読みました。なんでもこの世には、もともとの人類が選んだような生き方である、死んだ後に子孫を残す、という生き方ではなく、月が満ちて欠けるように生まれ変わりを繰り返す、という人種がいるのだ、という話を巡るファンタジー小説です。

八戸に生まれた小山内堅は、妻と瑠璃という名前の娘と三人で、千葉の稲毛で平凡に暮らしています。ある時熱病に侵された瑠璃は、妻の言うにはそれから不思議なことをし始めます。ぬいぐるみをアキラ君と呼び始めます。そして、見たこともなかったはずのデュポンのライターの石を交換できる、と主張します。はるか昔に流行った流行歌を歌うかと思えば、練習帳に吉井勇の短歌を書いたりします。そうした中で瑠璃は失踪します。高田馬場で見つかった瑠璃は、アキラ君を探しに来た、と言います。小山内は瑠璃と、高校を卒業したら好きなところに行って良い、と誓い、瑠璃もそれを了承しますが、妻と瑠璃は、交通事故で共に亡くなってしまいます。

舞台は変わります。葬儀の際に会った三角哲彦、という男性が小山内に会いに来ます。彼が語るのは、正木瑠璃、という年上の人妻と大学生の三角が出会った時の話です。愛し合うようになった二人でしたが、瑠璃は、不慮の事故で亡くなってしまうのです。その後に三角の人生に起こったことは。。。。見ず知らずの女子高校生から電話が入ったのでした。。。。

次の話は、正木瑠璃の夫、正木竜之介の話です。竜之介の浮気がもとで疎遠となっていた妻の瑠璃を事故で失った彼は荒れます。有望な一級建築士であった彼はほとんどヒモに近い存在と化すのですが、すんでの所で救われ、今の社長に見い出され、再び社会人として再び立ちます。彼に大変なついていたその社長の娘がやはり熱病に侵され、その後驚くべきことが起こります。娘はもともと瑠璃、と名付けられるはずだったというのです。見る見る冷たくなっていった娘から疎遠にされていた正木でしたが、ある日、娘が訪ねて来ます。そして驚くべき話をされ、彼女の言うままに。。。。。

ところで現在、小山内は、緑坂ゆい、という女優と彼女の娘、るりに呼び出されて上京してきています。るりは開口一番、前にそうしたようにどら焼きを食べろと彼に言いますが、彼にはその記憶がありません。でもるりは、いかにも彼をよく知っている様子を見せ、母と二人で彼に実に不思議な話をします。

なにせ新作、ネタバレはさせませんので、あとは是非買ってお読みください。三十有余年を経て再び蘇る愛の物語。蘇りは小山内にも訪れます。三角と瑠璃の愛の物語が大変に美しく描かれています。大変よくできたファンタジーではありました。



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by rodolfo1 | 2017-08-03 10:40 | 小説 | Comments(0)
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