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沼田真佑作「影裏」を読みました。

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第157回芥川賞受賞作品。沼田真佑作「影裏」を読みました。
いつもながら、芥川賞を取る作家さんは文章が大変うまいです。この方も実に文
章がうまい。冒頭の部分、主人公今野とその恋人?日浅が川で釣りをするシーン
などは、さながら映画「リバー・ランズ・スルーイット」を彷彿とさせる美しさ
です。しかし芥川賞作家といえば、その受賞作のみで鳴かず飛ばずになってしま
う作家さんが多いです。吉田修一などは数少ない例外。ほとんどの受賞作を読み
ましたが、二冊目を買ったのは、又吉先生くらいのものでした。

この作品もどうもそんな雰囲気です。岩手で同僚となった主人公今野と日浅はし
ばしば共に酒を飲みながら川釣りを楽しみます。その日浅は、滅びるものに興味
を惹かれます。倒木であるとか、そういうものに執着します。酒を飲んでは一緒
に魚を釣る。そうした付き合いの続くうち、日浅は唐突に仕事をやめてしまい、
音信不通になってしまいます。再び日浅が今野の前に現れた時には、冠婚葬祭会
社のセールスマンになっていました。また付き合い始めるかに見えた今野と日浅
でしたが、なんとなくぎくしゃくします。

そうした中で大変あいまいな形で、東北大震災が起きたことが語られます。そし
て日浅はどこかに消えてしまいます。いきつけの飲み屋や酒屋で日浅を探します
が、全く見つかりません。業を煮やした今野は日浅の父親のところを訪れるので
すが。。。。

小説の終わりはなかなか悲しいものでした。父親の悲しさが切々と実感されまし
た。しかし小説の結末としてはかなり食い足りないものでしたし、LGBTであっ
たことも曖昧に打ち切られてしまっています。芥川賞というのは所詮新人の登竜
門であって、長編小説ではなく、短編か中編であることが多いです。食い足りな
いのは仕方がないのかもしれませんが、金を出してこれを買い求める私らの立場
にもなってもらいたい。こんな受賞作ばかり売り出していればそのうち、という
か既に、大衆に相手にされなくなってしまうんではないですかね。


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by rodolfo1 | 2017-08-06 02:57 | 小説 | Comments(0)
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