奥田英朗作「沈黙の町で」を読みました。


d0019916_19234899.jpg
奥田英朗作「沈黙の町で」を読みました。奥田先生は実力のある作家さんです。
学園のイジメを主題とした小説ですが、流石に他の作家さんの作品のようなイ
ジメを単に描いた小説ではなく、実に厚みのある作品に仕上っています。

とある地方都市の中学校で一人の生徒が校内で死んでいるのを発見されます。
彼はテニス部の部室の二階から落ちて、側溝で頭を打って死んだのです。
警察は、彼の死体の背中一面に指でつねった跡が残されており、部室の屋根に
複数の足跡が残っていた事から、イジメによる事件である事を疑います。

警察が捜査に入り、同じテニス部の同級生四人の名前が浮かびます。彼らは亡
くなった名倉をパシリに使い、ジュースをたかったりしていたと言うのです。
その4人、坂井、市川、金子、藤田のうち、坂井と藤田は14歳であったために
逮捕されます。残りの2人も児童相談所送りになります。口裏合わせを防ぐ為
だと警察は言います。4人の親は大変なショックです。なにせ名倉がどう亡く
なったのか、全く不明な状態でした。

ところが警察は何も掴めません。4人は名倉とともに部室の屋根に上ったもの
の、名倉を残して帰ってしまった、と言うのです。学校はいきさつを調査しま
すが、警察同様何の情報も得られません。かろうじて名倉がいじめられていた
事実を確かめたのみでした。結局4人は自宅に帰されます。おさまらないのは
名倉の親族です。名倉は亡くなったというのに4人は元の学校生活に戻り、テ
ニス部も活動を再開し、夏の大会に出場する、と言うのを聞きつけた親族は、
辞退を求め、執拗にさまざまな要求を学校に突き付けます。

ここらあたり、奥田先生の人物模写がすさまじいです。親族の性格が精細に描
かれ、学校側の周章狼狽ぶりと共に、読んでいるのが嫌になってくるくらいの
描写でした。このあたりから物語は巻き戻されます。名倉が生きており、何故
名倉がいじめられるようになったか、という描写が始まります。もともと名倉
をいじめはじめたのは学校の不良生徒でした。はじめはそれを庇う側だった坂
井たちも、どこかコミュニケーション障害を思わせ、女子にも不遜な物言いを
したり、平気で暴力を振るう名倉に対して次第に反感を持ち始めます。

教師は述懐します。「中学生は、子供の持つ残虐性をまだ残している。中学校
でのいじめは高校などの比ではない。中学校の三年間はサバイバルそのもの
だ。」物語は大変分厚い。重層的に繰り広げられる物語構造は、まさに奥田先
生の面目躍如だと思います。何度も繰り返される情報収集の結果、ついにいじ
めていたのが4人だけでは無い事が判明します。驚くほどたくさんの生徒が関
わっていたのです。そして物語はついに真実を告げ始めるのです。

いやいや。さすがにいじめ問題を扱っても奥田先生は通常の作家さんとは違い
ますね。正直この問題にはかなり嫌気がさしているので作家さんによっては読
むのをやめてしまうこともあるのですが、この作品は全く違います。すべての
登場人物のキャラが見事に立っています。どうなることかと思わせた結末も大
変きれいにまとまっていました。おすすめです。


つぶやき ブログランキングへ


[PR]
by rodolfo1 | 2017-12-28 02:30 | 小説 | Comments(0)
<< 2017年12月。再び沖縄にGO! 高槻、味の懐、へんみにお邪魔。 >>