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東野圭吾作「魔力の胎動」を読みました。

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東野圭吾作「魔力の胎動」を読みました。英語の表題の如く、過去作「ラプラス
の魔女」の前作にあたるとか。

第一章「あの風に向かって飛べ」シリーズ大半に登場する鍼灸師ナユタは、スキ
ージャンプの第一人者、坂屋の治療を行っています。坂屋は近年加齢と共に試合
に勝てなくなっており、そろそろ引退を考えています。その坂屋のフォームをチ
ェックしている際に、羽原円華が現れ、フォームの悪さは膝の悪化のせいである
事を的確に指摘します。円華は乱流を読む事が出来る天才です。ゲレンデに現れ
た円華は、驚きの提案を行い、坂屋はその結果。。。。

第二章「この手で魔球を」円華は、再び野球界に現れます。無敵のナックルボー
ラー石黒は、そのボールを捕球できる唯一の捕手三浦の引退とともに、自らも引
退を決意しています。誰も彼のナックルボールを捕球できなかったのです。三浦
によって後継と目された山東でしたが、試合では全くナックルを捕球できません
でした。そこに現れた円華は。。。。

第三章「その流れの行方は」ナユタはたまたま親友の脇谷と出会い、恩師の石部
の息子が入院し、石部がそのために教職を休職し、葛藤している事を知ります。
息子は重度の発達障害であり、川遊びの最中川に転落して植物状態に陥っていた
のです。息子は円華の父親で脳外科の天才教授である羽原博士の元に入院してお
り、教授は息子に特殊な手術を施そうと考えています。転落事件の自責から、息
子に面会出来ない石部に対して円華は川の流れを読み解き、石部たちの責任の有
無を。。。。

第四章「どの道で迷っていようとも」盲目の音楽家朝比奈は、ゲイのパートナー
であった尾村の転落死をきっかけに作曲を止めています。朝比奈のカミングアウ
トが尾村の自殺のきっかけであったという自責の念からでした。朝比奈の治療を
引き受けていたナユタは円華を朝比奈の元に同道し、円華は尾村の転落の原因を
朝比奈に提示します。円華は、ナユタが本名を捨てて何故ナユタと名乗るように
なったかという謎を解きあかしますが、このくだりはちと平板に過ぎます。この
問題はもっと重いものだと思います。

第五章「魔力の胎動」微妙に第四章と関連しています。とある温泉地で起きた硫
化水素中毒に関して、専門家青江が現地に呼ばれます。一人の男性が硫化水素中
毒で亡くなったのです。当地はかつて硫化水素が湧いて危険であるとされた場所
で親子三人が硫化水素中毒で亡くなった温泉であり、その時現地調査を行った縁
で青江が呼ばれました。三人の調査が終わり、結論が出た後に青江が駅で見た少
女と青年の不思議な光景とは。。。。

大変面白く読みました。どの話も起承転結がはっきりしており、大変明解な作品
でありましたが、あまりに軽いですね。前作、ラプラスの魔女から編集者がひね
り出した作品、という趣きが強い小説でした。この頃は東野先生を西村京太郎の
後継と目する評論も多いらしいです。東野先生にはこのような軽い短編ではな
く、容疑者xの献身的な骨太な長編小説を物されることを望みます。


by rodolfo1 | 2018-05-25 02:00 | 小説 | Comments(0)
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