阿部恭子作「息子が人を殺しました 加害者家族の真実」を読みました。

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阿部恭子作「息子が人を殺しました 加害者家族の真実」を読みました。
日本初、加害者家族支援のNPO法人を立ち上げた筆者が綴る犯罪加害者
家族の実態とその真実は?

小説は大まかに三部から成ります。第一部は、実際に筆者が見聞きした
犯罪加害者の家族の実態です。一旦犯罪加害者と認定された場合、その
家族に起きるのはすさまじいばかりの世間からのいじめです。特に最近
ネットが発達してからは、あっと言う間に家族の名前や住所は特定され
それに取材陣が拍車をかけます。家族の近隣を取材する彼らのおかげで
家族から犯罪者が出た、という事実が知られてしまいます。

しばしば犯罪加害者の家族からは自殺者が出ます。家族には救いを与え
ると称して宗教団体や霊媒師が群がり、家族を食い物にします。家族に
とって辛いのは、こうして苦しめられる家族の事を当の犯罪者自身が殆
ど気にしない、というか、家族がどうなっているという情報を全く持ち
合わせていない場合が殆どだと言うことでしょう。家族の味方は誰も居
ないのです。

第二部は、当NPO団体設立の趣旨と動き方の話です。犯罪者の中にはし
ばしば家族から虐待されたり不当な仕打ちを受けたりしており、それに
対する反発という形で他者に犯罪を行う者がいます。その彼らに反省を
促し、全うな人格に立ち戻らせるためには家族へのカウンセリングが重
要になると言います。死刑にならない限りいつか犯罪者は更生しなくて
はなりません。その更生に家族の関わりは欠かせません。また、犯罪を
阻止するためにDVや虐待への早期介入が必要です。本書には、阿部氏
がどのような経緯で本団体を設立するに至ったか、という経緯が説明さ
れます。

第三部では、団体の活動の実際が描かれます。欧米のそのような活動に
ついて報告され、団体が行っている加害者家族の集いについて述べられ
ます。加害行動が起きる前に、加害者はさまざまなサインを家族に示す
事があります。その段階で介入できれば犯罪を防ぐ事も可能なのかも知
れません。

なかなか示唆に富むドキュメンタリーでありました。小説家の小説では
ないので、各々のエピソードは大変興味深いものの、一貫した主張が無
く、とりとめのない印象であるのはノンフィクションの宿命であると思
いました。しかしノンフィクション嫌いの私でありましたが、本書は大
変参考になったと思いました。



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by rodolfo1 | 2018-06-21 02:28 | 小説 | Comments(0)
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