吉田修一作「ウォーターゲーム」を読みました。

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吉田修一作「ウォーターゲーム」を読みました。読んで驚きましたが、今回の作
品は従来の純文学形式ではなく、サスペンス&ミステリ仕立てとなっています。

冒頭の舞台は、なんということのない日本の山奥の飯場です。若宮真司はダム工
事の現場で働いていたのですが、社長に連れ出され、金を持って二人で逃げよう
と誘われます。その証拠に面白い物を見せる、と言われ、ついていくと、なんと
工事中のダムが爆破されてしまいます。

この大惨事を引き起こしたのは、外国の水商社、V・O・エキュ社と、結託する日
本の政治家、中尊寺達でした。テロの標的となった日本の水資源を民営化し、乗
っ取る為です。その企みに関わるのが、産業スパイ組織のAN通信。日本に潜入し
ていたのがエージェントの鷹野と田岡でした。ところが話は微妙に入り組んでい
ました。本来このテロは中止される筈だったのに起こってしまったと言うので
す。鷹野は、V・O・エキュ社の内部で分裂する勢力を追求し始めます。

その分裂した勢力とはシンガポール国籍のリー・ヨンソンという男でした。その
事を、鷹野は中尊寺から告げられます。計画の当初、鷹野と行動していた一匹狼
の女スパイアヤコは、鷹野とは離れ、リー・ヨンソンに会いに行きます。招待を
受けたのです。リーは、AN通信の情報を調べ、自分に漏らすようアヤコに依頼し
ます。リーはもっと大きな勢力の代表で、水利権の仕事を独占しようと企んでい
るのです。

九州新聞の女記者、九条はダム爆破に真司が咬んでいる事のではないかと疑い、
真司の行方を追っています。真司の周辺の情報から、真司が元々は、AN通信にリ
クルートされる予定だったのを探り出し、AN通信にも調査の腕を伸ばします。調
査の結果、AN通信のエージェント養成施設が沖縄にある事がわかり、九条は沖縄
に飛びます。そこで九条は真司を見つけます。

折から更なるダムの爆破が起こり、中尊寺は、リー・ヨンソンから提案を受けま
す。リーは、中尊寺の当初の計画をばらされたくなければ、AN通信壊滅に力を貸
すよう中尊寺に求めます。他に選択肢の無い中尊寺はその提案を受けます。

カンボジアに居たイギリスの投資会社、ロイヤルロンドングロース社の幹部、ミ
ス・マッグローは、フリーのエージェント、デイビッド・キムに接近されます。
彼は、リー・ヨンソンを彼女に紹介します。リーは中央アジアでの水利権を掴も
うと画策しており、マッグローに投資協力を求めます。

鷹野はリーの調査のため、カンボジアを訪れていたところ、キルギス人のアジス
と知り合います。アジスは、キルギスで企まれている水利権の仕事を阻止しよう
としています。キルギスの水利権が外資に渡れば、現地人には法外な水道代が課
せられ、永遠に搾取されると言います。そのためAN通信に協力を依頼するので
す。

ところがアヤコが不思議な情報を掴みます。リー・ヨンソンの意外な過去が判明
し、アヤコはそれをマッグローに告げます。その結果起こる恐るべき事態と陰
謀。多彩な登場人物が絡み合い、リーの正体がついに明かされます。物語は手に
汗握るアクションシーンから、怒濤の結末へと導かれて行きます。

日本人が書いたサスペンス作品としてはなかなかの作品であると思いましたが、
如何せん短すぎます。戦いの対立軸がいまひとつはっきりせず、とりとめのない
印象に終始します。物語の危機感を煽るには、もっと広範な情報と物語の肉付
けが無ければならなかったと思いました。欧米のミステリに比べればだいぶ底の
浅い作品でありました。








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by rodolfo1 | 2018-06-29 02:49 | 小説 | Comments(0)
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