島本理生作「ファーストラヴ」を読みました。

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本年度直木賞受賞作、島本理生の「ファーストラヴ」を読みました。主人公は、
臨床心理士の真壁由紀です。彼女は、聖山環奈の事件を書籍化しようとしていま
す。

環奈の事件とは、アナウンサー志望であった彼女が、二次面接の直後に父親を刺
殺し、夕方の多摩川沿いを血まみれで歩いていた、というものでした。しかも彼
女は、逮捕された後こう言ったといいます。「動機はそちらで見つけて下さい」
と。

由紀は夫の我聞と子供の正親と三人で幸せに暮らしています。夫の弟、迦葉は弁
護士として、環奈の事件を担当していますが、彼と由紀は大学の同期生でした。
迦葉は由紀に相談がある、と言います。由紀の本の事を聞きつけたのです。

ところで迦葉と由紀の間には何かしらわだかまりが存在します。実は二人は元々
由紀が我聞と知り合う前からの知り合いで、ついにうまくいかなかったカップル
だったのです。ぎくしゃくとしながらも二人は環奈の事件を掘り下げて行きま
す。

面会で出会った環奈は、事件については全くの他人事のようです。実は自分は嘘
つきであって、父親を刺した事もあまり覚えていない、と言います。最初の面会
は全く取りつく島がありませんでした。

ところで迦葉の生い立ちは複雑です。もともと我聞の従兄弟にあたりますが、両
親が離婚し、我聞の家に引き取られて来ています。しかも母親に深い葛藤を抱え
ています。何故由紀とうまくいかなかったのか、という点も、後に由紀によって
説明されます。このくだりは大変劇的に描かれます。

環奈は、由紀に手紙を書き、自分は頭がおかしいので、治して欲しい、と依頼し
て来ます。しかも彼女の母親は、検察側の証人に立つ、と言います。娘とは対立
する立場です。そこに何かが隠されている、と由紀達は考えます。

ところで、由紀は由紀で両親との軋轢を抱えています。彼女の父親は、昔東南ア
ジアで子供を買春しており、その事で母親に責められます。しかし問題はそれだ
けに留まりませんでした。由紀に深いトラウマを与えています。

由紀達は調査を続け、環奈の両親が、いかに環奈に虐待を働いていたかを明らか
にしていきます。ついに環奈は、自分のトラウマに気づき、自分を守る努力を始
めます。

日本のミステリで臨床心理士が主人公であるものは大変珍しいと思います。海外
のミステリではしばしばこの問題が重きを占めますが、この点大変読みごたえが
あったと思いました。最後の法廷の場面はあまりに環奈が理路整然としていて、
やや真実味を欠くきらいがあったと思いましたが、日本人作家の作品としては出
色の出来でありましょう。直木賞は納得の受賞だろうと思いました。



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by rodolfo1 | 2018-08-09 02:30 | 小説 | Comments(0)
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