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アンソロジー集「恋愛仮免中」を読みました。

アンソロジー集「恋愛仮免中」を読みました。_d0019916_11495619.jpg
奥田英朗、窪美澄、萩原浩、原田マハ、中江有里の恋愛を巡るアンソロジー集
です。題名のとおり、どれも発展途上の恋愛を扱った話です。

第一作、奥田先生作、「あなたが大好き」は、アラサーの女性が主人公です。
もう3年も付き合っている彼氏は、さっぱり結婚を口に出さず、仕事を勝手に
辞めてしまい、インド旅行に旅立ってしまいます。すべてが事後報告です。
彼のあまりの勝手さに新しい出会いを求めようとする彼女でしたが、好条件と
思えたその相手が案外。。。さすがは練達の奥田先生うまくまとめておられます。

第二作は窪先生の「銀紙色のアンタレス」です。
中学三年生の主人公の頭にあるのは、おばあちゃんの家に泊まって毎日海で泳
ぐことしかありません。うっとおしいことに、幼馴染の女の子が一緒に泊まる
というのです。主人公は海でとある子連れの女性と出会い、彼女に惹かれて行
きます。これは窪先生の他の短編集に収載されていて既読でした。相変わらず
大した事がありませんでした。

第三作は萩原先生の「アポロ11号はまだ飛んでいるか」です。これは素晴らし
い名作でした。60歳になる主人公の現在と、中学一年生の時の自分とが平行し
て語られます。切ない子供時代の憧れが、長じて闘病生活、という重たい現実
と巧みに対比されます。なにか人生における儚さというものを如実に感じさせ
るすばらしい作品でした。この一章だけのためにこの本を買う価値があると思
いました。

第四作は原田先生の「ドライビング・ミス・アンジー」。これは設定が素晴ら
しい。京都に住む主人公は会社を首になったもと役員で、英会話が達者だった
ことからタクシー会社に雇われ、外人客相手の観光ドライバーとして結構重宝
される存在です。妻を亡くしたばかりで、折柄会社との揉め事の板挟みになり
ろくろく看取りもできなかったため、娘さんとはほぼ疎遠な関係です。
たまたま拾った金髪碧眼の美人観光客、ミス・アンジーにチャーターされた主
人公は、一緒に京都の名所を巡ります。アンジーと仲良くなった主人公は。。
。。原田先生の小説はいつも設定は素晴らしいのですが、最後の詰めがいまい
ちです。この短編も、今後に続く布石を打てばよかったのにと思いました。

第五作は、中江先生の「シャンプー」です。主人公の少女は、両親が離婚して
おり、普段はクラブ経営者の母親と暮らし、月一回父親の経営する理髪店で散
髪してもらう、という暮らしをしています。たまたま母親の美容院通いに呼び
出された少女は、美容師のタケルと知り合います。そのタケルとの仲を学校で
勘繰られた主人公に学校でいじめが始まったのですが、意外な方法で反撃しま
す。まあ話は見えますが、いまいち登場人物に精彩がありません。今後に期待
したいと思います。

以上レビューしました。萩原先生は素晴らしかったです。





by rodolfo1 | 2018-10-23 02:23 | 小説 | Comments(0)
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