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五十嵐貴久作「贖い」下巻を読みました。

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五十嵐貴久作「贖い」下巻を読みました。
小説の冒頭は、殺された一歳の乳児、松永正人の父親が登場します。弁護士を同道して愛知県警に現れた松永は、妻を犯人扱いした警察の非を詰り、謝罪を要求します。元々は刑事戸森の先入観からの捜査方針でしたが、謝罪を要求された戸森は、坪川を巻き添えにします。坪川からの捜査情報が間違っていたと言うのです。本来妻は犯人ではないという考えだった坪川は納得できません。抵抗する坪川に対して上司はかつての坪川の事件を引き合いに出して坪川に謝罪を要求します。納得できない坪川は辞表を提出しますが、係長大久保は意外な話をして、坪川を慰留します。

春馬山の女子中学生殺人事件は捜査が停滞しています。当時春馬山に入った車を捜査していた神崎と由紀は、とあるレンタカーに注目します。東京から来た人物が借りたそのレンタカーは、不思議な時間に返却されていました。二人はその客に話を聞こうと考えます。その人物とは意外な人物でした。

坪川は、誘拐事件を目撃したと思しい老婆のもとを訪ねます。何も覚えていない、気のせいだった、と目撃証言を拒否する老婆でしたが、一言坪川に伝えます。白い車に乗っていたようだったと。そして坪川は思い出します。松永家の近くのコインパーキングで白い車を見た、という目撃証言があった事を。

星野と里奈はひたすら稲葉を追跡します。あちこちで敵意のこもった扱いを受けます。稲葉さんは良い人だと言うのです。しかし二人はめげません。稲葉に面会した星野は尋ねます。総務として一番忙しい日である7月1日になぜ稲葉は休みを取ったのかと。

坪川は、あるひったくり犯の取り調べを手伝っていました。年寄り専門のひったくり犯であった彼らは、ある時意外な事件に遭遇します。相手の老人は強力に抵抗し、ついに大きい方の荷物を手放さなかったと言います。その時奪った小さい手荷物から、次第にその折の老人の消息が知れます。

そして捜査は進み、次第に三つの事件の共通項が現れます。三人の子の父親たちにはみな中学で人生が激変した過去があったのでした。

さて、下巻のレビューはこれで終わります。これ以上ネタばらしをするのは今後の読者にとって決して有益ではありません。多少登場人物の性格模写に物足りなさが残るものの、プロットは完璧です。すべての伏線が完璧に回収され、犯人の無念さが惻惻と伝わって来ます。結末は大変ドラマチックなものでした。大変なおすすめ小説です。是非一読なさることをお勧めします。







by rodolfo1 | 2019-02-23 02:55 | 小説 | Comments(0)
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