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辻村深月作「本日は大安なり」を読みました。

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辻村深月作「本日は大安なり」を読みました。ある大安の日にホテル・アールマティで挙式する4組の訳ありカップルを描きます。相馬家と加賀山家、十倉家と大崎家、東家と白須家、鈴木家と三田家が登場します。

加賀山家の妃美佳と鞠佳は一卵性双生児の姉妹です。二人はそもそもどちらが姉で妹かという所から葛藤しています。映一と結婚するのは妃美佳でした。妃美佳は鞠佳に新婦を入れ替わらせます。そもそもは、鞠佳が、街で映一と会って映一に妃美佳と間違われたと話したことに妃美佳が切れた事から始まりました。妃美佳は自分と鞠佳を見分けられなければ映一と結婚する意味は無いと思い詰めていたのでした。しかし事実は。。。

結婚式当日、姉妹と映一の戦いは始まりました。式は順調に進みます。映一は勘弁してよと言ったきり、特に何もしません。映一の結婚相手の決め手は風変わりなものでした。より大きい問題を抱えている相手と結婚したいと言うのでした。妃美佳をややこしい子だと見抜いたのでした。妃美佳の最大のこだわりは、どうしても自分でなければダメな人、というものでした。

完璧に鞠佳を演じている妃美佳を見て、鞠佳は妃美佳の残酷さに震えます。妃美佳は映一を完璧にだます積りだと思いました。誓いのキスを受けますが。。。。

小さいころから鞠佳は妃美佳と近づきたがりました。互いにマウンティングを取り合い、スポイル・シスターを作ろうとします。逆に妃美佳は鞠佳と距離を置きたがっていました。意識的に鞠佳と逆の事をし、容姿を大変地味にしていました。よく勉強して成績を上げ、女子中へ進学します。

そこで事件が起こります。ある学生が、妃美佳を鞠佳と間違えて告白し、キスしたのでした。一生処女だと覚悟していた妃美佳は喜びに震えました。しかし、学生は、鞠佳、と呼びかけました。自分が鞠佳なのだと気が付いた妃美佳は大胆になります。もっとキスを求めました。それが妃美佳の初恋でした。

しかし怒り狂った鞠佳が妃美佳の元に現れます。学生に告白されて断ったのに、妃美佳の所に現れたと言って泣きながら謝罪しました。妃美佳は反論できませんでした。学生は鞠佳と家族に土下座しました。妃美佳は初恋の彼を鞠佳に奪われたのでした。

妃美佳は、高校のブラスバンド部に入り、部は文化祭へ準備を進めていました。誰が指揮者になるかで揉め、めだたない妃美佳が選ばれかかりますが、容姿をくさされ、個人攻撃されてしまいました。すると鞠佳がやってきます。事件を聞きつけた鞠佳は、妃美佳を美容院に連れて行き、コンタクトレンズを買い、化粧させます。

出来上がったものは妃美佳ではなくなっていました。ついに妃美佳は鞠佳にされてしまったのでした。学校で自信満々で指揮者に名乗り出ます。鞠佳になっていたからでした。こうして妃美佳は殺されてしまったのでした。

山井はウェディングプランナーです。十倉家と大崎家が担当でした。新婦の大崎玲奈は嫌味な女でした。招待客の美容室の予約を忘れ、山井はてんてこまいになります。同僚の岬とさまざまな手配をし、事態を収拾しました。玲奈は勝手な思いつきでさまざまな変更を要求し、態度は尊大でした。絶対に非を認めません。彼女は「負けたくない人」でした。しかし山井はプロです。気に食わない相手でもベストを尽くします。玲奈をいなし、式に向けて準備を進めます。

山井は一度結婚しようとした事がありました。結局彼の浮気で別れたのでしたが、その時の結婚式の準備の経験からウェディングプランナーを目指しました。しかしその浮気の相手と言うのが実は。。。。

東家と白須家の控室では、白須りえ拘りのカチューシャが無くなりました。白雪姫デザインのウェディングドレスの重要なパーツでした。小学校二年の甥の真空は忸怩たる思いでそれを眺めます。真空はりえが大好きで、将来はりえと結婚するつもりでした。

薬剤師のりえが結婚する相手は薬局の販売員でした。7歳年下のフリーターで、白須家では彼への風当たりがきつかったのでした。婚約指輪も買えませんでした。真空はりえの働いている薬局を訪ね、東が別の女と密談しているところを見つけました。東は真空に口止めしました。

真空はリング・ボーイを務めます。ある理由で緊張しています。指輪を差し出す最中、無理に転びました。指輪を遠くへ飛ばして式を辞めさせようとしたのでした。それを助けてくれたのが狐塚でした。

式の途中、真空は狐塚と友人の恭司に呼び止められました。そして狐塚は真空がお腹に隠しているものの事を言い当てます。真空は、このままではりえは東に殺される、と訴えます。東と薬局の女は、毒を入れる相談をしていた、と言いました。リンゴの中に入れてりえに食べさせると言っていたのでした。恭司は阻止だ阻止!と叫び、自分らにまかせろ、と真空に言いました。

鈴木陸雄は三田あすかと結婚します。しかし陸雄はこそこそと何か企んでいます。実は貴和子と既に結婚していました。子供が授からない事を巡って、最近は疎遠な関係になり、陸雄は浮気をしたのでした。何故か話はどんどん進み、今日結婚する運びになってしまいました。陸雄は灯油を用意していました。放火して結婚式をキャンセルしようとしていました。

陸雄は元バンドマンです。大変もてました。女を取っかえ引っかえしています。しかし貴和子はバンドリーダー伸の妹でした。伸はいい加減な陸雄をいつもかばい、陸雄は伸に足を向けて寝られません。陸雄は自分の事をラッキーマンだと自覚しています。小さいころから嫌なことがある度に、何かラッキーな事が起こって事件を回避できました。貴和子との出会いもそうしたラッキーの一つ、転落からのストッパーだと思っていました。陸雄は貴和子と結婚したのでした。

妃美佳は鞠佳に扮して歌を歌います。少し音がはずれ、妃美佳は泣き崩れます。それをじっと見る映一を鞠佳は嫉妬します。実はかわいい妃美佳の持ち物である彼の事が欲しかったのでした。

恭司は表でゴルフクラブを振り回していました。自分が参加する式の余興に使う、と言います。そして心配する真空に、現れた狐塚が、不思議な事を話し出したのでした。

突然式場に呼び出された山井は、玲奈に式場のみんなへ紹介されます。そしてそれまでの自分の態度を謝罪し、山井にハンカチをプレゼントします。そのハンカチとは。。。。

その時、防災ベルが鳴り始めました。その時真空は、白雪姫に扮したりえちゃんに渡されたリンゴの中に入っていた意外な物の事を知り。。。。

陸雄はベルを聞いて大層焦りました。何せ彼は。。。。

妃美佳と鞠佳の式場でもベルが鳴ります。映一は実に意外な行動に出ました。

山井は玲奈を連れて避難しました。しかし火事は既に。。。。

山井は玲奈に謝罪します。しかし十倉は山井を非難します。ところが玲奈は。。。。

鞠佳は映一を難詰します。しかし、ややこしい子が好みなのだという映一は歯牙にもかけません。あろう事か、鞠佳の一番聞きたくない一言を。。。。

恭司が参加するはずだった結婚式は。。。。彼は相手にすべてばれているのだと言い、殴りに来たと言ってゴルフクラブを見せました。しかし恭司は意外な事実を告げました。思わず。。。。

山井は上司と掛け合います。今日の料金をすべて棒引きにするよう迫ります。逡巡する上司に、同僚の岬も後押しします。岬と山井は。。。。

当初、妃美佳と鞠佳のスポイルシスター小説かと思われた本作は、意外な登場人物の活躍により、後半飛躍的に展開します。辻村先生独特の学園ものから始まり、結婚式というものへ昇華していく小説のさまは大変お見事でした。プロットとトリックは素晴らしい出来で、辻村先生お得意のハッピーエンドへ向けて爆走します。辻村作品はしばしば毀誉褒貶しますが、本作は当たりであったと思いました。

また、本文庫及び単行本の装画は、さやかさんという人気装画家さんです。闘う花嫁、という図柄で大変魅力的だったと思いました。。先生の画業はこちら。








by rodolfo1 | 2019-09-02 02:55 | 小説 | Comments(0)
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