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辻村深月作「家族シアター」を読みました。

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辻村深月作「家族シアター」を読みました。短編集ですが、いかにも辻村作品らしく、全編が家族、主に学童を扱ったもので、すべてはハッピーエンドを迎える設定です。

第一章、妹という祝福。冒頭は姉の由紀枝の結婚式です。妹の亜季は、式場の自分の席に姉からの手紙があるのを見つけました。内容は亜季には衝撃的な物でした。

姉は真面目な子でした。成績は良く、ピアノや書道も堪能です。しかし見栄えは全く良くありません。小太りで運動が出来ず、地味な子達と付き合っています。妹の亜季は、勉強は出来ませんが、見栄えも良く、友達がたくさんいました。姉の事を漫画ばかり描いている不毛なオタクだと馬鹿にしており、家では不仲でした。亜季の趣味はライブに行く事でした。

次のライブをクラスで人気の遠藤と一緒に行くことになって亜季は舞い上がります。ついに彼氏が出来そうでした。しかし遠藤は広瀬先輩からの告白を断っていました。先輩は学校で恐れられている女子でした。一緒にいるところを先輩に見つかり、しめられる、と恐れます。しかし由紀枝が驚きの行動に出ます。それは。。。。

遠藤と行くライブの日が来ました。亜季は浮かれますが、遠藤は姉の事をくさし、亜季は。。。。

第二章、サイリウム。ミントガールズは中野を拠点とするご当地アイドルグループです。ナオはミントガールズ推しのコアなファンで、会場のファンにサイリウムを配って一緒にオタ芸でグループを盛り上げます。会場で隣に眼鏡とスーツ姿の女性がサイリウムの使い方を聞き、ナオは丁寧に教えます。サイリウムはナオ達の自腹で、ライブ終了後の回収もきちんと行いました。

ナオの姉、真矢子は23歳です。趣味はバンギャでした。人気バンドの追っかけをしており、ナオのオタっぷりを馬鹿にします。ブログをやっていて、バンギャぶりを更新していますが、最近記事の風向きが変になりました。全く記事を更新せず、部屋で爆音でかけていたバンドの曲も止まってしまいました。好きなバンドが解散するので嘆いていたのでした。心配するナオでした。すると真矢子は意外な物をナオに持って来ました。

第三章、私のディアマンテ。絢子の娘、えみりは成績優秀な17歳の特待生です。東大にも行ける、と担任の田中先生に太鼓判を押されますが、絢子にはいまいちピンと来ません。絢子は元はキャバクラのホステスでした。夫の公務員、秀一郎に店で見初められ、以後は専業主婦でした。兄嫁の桃江は地元のタウン誌、ディアマンテに街角スナップコーナーで二回取り上げられたのが自慢で電話を掛けて来ます。桃江さんの実家は資産家でした。

桃江さんにえみりとランチに誘われますが、えみりは行きたくないと言います。以前桃江に、勉強ばかりしているえみりは嫌味だと言われたのでした。それを聞いた絢子は驚きの行動に出ます。

えみりは絢子の事が嫌いだと言います。些細な行き違いが何度もあり、特待生という身分を誤解されてクラスで浮いていた事もあり、えみりはイライラし、絢子に当たります。食欲もまるでありません。その理由に思い当たった絢子は。。。。

第四章、タイムカプセルの八年。本短編集で一番好きなのがこの作品です。一人息子の幸臣は今日から初登校です。小学校の教師になったのでした。父親の孝臣は、私大の准教授です。今日は月一回の親父会の飲み会でした。

そもそも親父会は、幸臣たちの小学校の父親達の親睦会でした。妻の温子に参加するよう厳命されました。孝臣は変人です。学校行事やクリスマスにちっとも参加しません。一人で本を読んでいるのが幸せでした。嫌々参加すると、菓子屋の沢渡屋の沢渡が仕切っていました。

温子の実家が商店街のタバコ屋だった関係で、結婚後、隣近所への挨拶周りで沢渡と知り合いました。沢渡は近隣のボス的存在でした。以後沢渡は孝臣の事をタバコ屋、と呼び、しばしば商店街のバス旅行やBBQで顔を合わせます。孝臣に会計係を押し付けました。幸臣の同級生、小松ユカリのパパが手伝ってくれました。

幸臣は学校教師を志望していました。それは担任の比留間が大変生徒に人気があったからだと思われました。比留間はタイムカプセル作りを生徒に提案し、受け入れられます。比留間は自分でそのカプセルを埋める、と請け合いました。しかし比留間は別の小学校に転勤になりました。

しかし、幸臣はそのタイムカプセルが、小学校に放置されている、という話を聞いて来ました。あの先生ならやりかねない、と幸臣は醒めた事を言います。温子は、実は比留間は学級活動にのみ熱心で、肝心の授業を全くやっていなくて、生徒は困っていたと言います。

孝臣はタイムカプセルの事を小学校に聞きに行きましたが、教えてもらえませんでした。タイムカプセルが放置されていることで、幸臣を比留間に失望させたくない孝臣は、また小学校を訪問しようとしますが、意外な相手から電話を貰い、孝臣を見直した、と言われます。そしてタイムカプセルの行方について議論します。再び親父会が立ち上がり。。。。

幸臣たちの成人式の日に、タイムカプセルは掘り出され、開かれました。そこに入っていた幸臣の意外な手紙とは。。。。

第五章、1992年の秋空。はるかは学習、うみかは科学。二人の姉妹は別々の学習雑誌を買います。うみかは一学年下で、科学が大好きでした。姉妹は仲が悪かったのです。はるかはよくうみかにいらいらさせられました。はるかが何か言えばすぐに正論で返すのでした。

はるかの学校では学級だよりを生徒が書きます。はるかは自分の番の時は決して悪目立ちしないと決意していました。はるかはうみかに、来月だけは学習ではなく科学を買ってくれと頼みます。日本人宇宙飛行士、毛利さんの特集だったのでした。うみかの夢は宇宙飛行士になる事でした。母親はうみかに、逆上がりは出来るようになったのか?と聞きました。はるかはうみかの練習を手伝います。翌日も練習に付き合ってくれるよううみかは頼み、はるかは了承しました。

しかし次の日は、仲良しのミーナの家で雑誌、りぼんとなかよしを読む日でした。ついうみかの事をほったらかしにしますが、結果。。。。はるかは死ぬほど後悔します。なんとかうみかに報いたいはるかは、学級だよりに意外な文章を綴ります。

第六章、孫と誕生会。長男の孝治は娘の実音たち家族を連れてアメリカから帰国し、実家に家を建てて同居する、と言い出します。70近い俺にとってはなかなかいい話でした。俺は気楽にスイカを作る以外は、ゲートボールなど地域活動に忙しくしていました。久しぶりに会う孫の実音はがりがりに痩せていました。俺はみみずを見せて実音を怖がらせてけけっと笑います。

実音はものすごい偏食児童でした。家族もそれをたしなめません。実音はアメリカで学校にうまく馴染めませんでした。英語をからかわれたのでした。日本の学校についても大変心配していましたが、出だしは好調でした。すぐに友達が出来ます。孝治の同居とともに、次男家族もよく実家に顔出しするようになりました。俺はみんなにスイカを振舞います。みんなスイカが大好きでしたが、やはり実音の食は進みませんでした。

実音が熱を出して学校を休みました。俺は留守番していました。たまたまアメリカから手紙が届き、それを実音の部屋に持って行くと、アイスを食べてゲームをやっていました。やはり長男夫婦は甘やかしすぎだと俺は思いました。しかし夏休みに入り、実音はまた涙を流します。友達の誕生会に呼んでもらえなかったのでした。運動神経が悪くてみんなの足をひっぱるからかもしれないと、毎日ジョギングに励みます。俺は実音のフォームをアドバイスし、両親にはたしなめられますが、実音のジョギングは進歩し、だんだん食欲も出て来ました。

俺のところに学校で、竹とんぼ作りを教えてくれ、という依頼が入ります。俺は裏の竹藪で竹を取ってきて準備します。子供たちは小刀の使い方を練習しました。授業の日、三年生全員が参加します。俺はお師匠さまと呼ばれ、みんなにアドバイスを求められました。竹とんぼは高く飛び、授業は大好評でした。俺は学校の人気者になり、実音も友達の誕生会に呼ばれました。実音は懸命に持って行くプレゼントを選びますが、俺はそれに批判的な事を言い、実音は泣き出しました。そして、どうせおじいちゃんは他の子の方が好きなんだと言い、俺は痛いところを突かれました。

しかしお誕生会でまたトラブルがありました。プレゼントが他の子と被ったのでした。途中で帰宅し、また泣き出す実音でした。俺は実音を誘い、実音が削った竹とんぼを飛ばしに行きます。飛ばしながら、実音は、友達たちが苦手だ、と告白します。しかしその場に実音の同級生が現れ。。。。俺は実音に意外な一言を言い、実音は。。。。

第七章、タマシイム・マシンの永遠。俺が希美と結婚し、子供まで設けたのは、実はドラえもんの漫画に出てくる、タマシイム・マシンの話を希美たちがしているのを、隣で聞いていたからでした。三人で実家に帰省し、孫を可愛がる父母を見ていて俺は思います。実はタマシイム・マシンとは。。。。

家族シアターというよりも辻村劇場ですね。しかし辻村先生の作品はこうでなくてはなりません。大変楽しい物語ばかりでした。






by rodolfo1 | 2019-11-26 02:53 | 小説 | Comments(0)
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