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唯川恵作「手のひらの砂漠」を読みました。

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唯川恵作「手のひらの砂漠」を読みました。

プロローグ。可穂子は夫の雄二に虐待され、暴力を振るわれていました。ある夜、彼の元から逃亡します。警察に駆け込んで保護を受けました。

第一章、シェルター。可穂子が雄二と知り合ったのは会社の新年会でした。雄二が現れ、二人だけで飲みに行き、以後デートを重ねます。彼の会社での評判は上々でした。姉と兄は優秀なのに自分は落ちこぼれだと言います。しかし真摯に生きようと決意したのだと言いました。可穂子はその言葉に感動し、彼と付き合います。彼はプロポーズし、可穂子は受け入れました。彼は可穂子が専業主婦になる事を望み、折柄派遣を切られた可穂子は彼と結婚し、専業主婦になりました。

新婚生活は順調に始まりました。しかし雄二の束縛が始まります。可穂子の携帯履歴に文句をつけます。しかしすぐに謝りました。半年後、DVが始まりました。しばしば感情を爆発させ、可穂子に物を投げつけます。しかしすぐに謝りました。

次に雄二は可穂子を殴り始めます。家を出る、と可穂子が言うと、雄二は土下座して泣きながら謝りました。激しく落ち込む様子を見て、自分が雄二を癒す、と決めますが、執拗にDVは続き、可穂子は雄二の機嫌ばかりを伺うようになりました。次第に可穂子は麻痺してきます。可穂子は妊娠しますが、DVのため流産しました。実家に帰りたいと頼む可穂子に、実家に火をつけると雄二は脅します。ついに可穂子は首を絞められ、辛うじて息を吹き返します。可穂子は意を決して逃げました。

配偶者暴力相談支援センターの職員がやってきました。シェルターを紹介されました。NPO法人主宰の国子が待っていました。可穂子は事情を説明しました。国子はDVの典型的なパターンだと断定しました。可穂子は雄二との離婚を望みました。両親を伴って雄二に会いに行きましたが、雄二は流産後、可穂子が精神的に不安定になり、暴れるようになった、顔の傷は自分でつけたものだと言い訳します。そこに雄二の両親が突然現れ、別居を認めました。雄二は怒り狂います。突然ベランダから可穂子を突き落とそうとし、取り押さえられました。

可穂子はシェルターに残りました。雄二が実家に手を出すのを恐れたのでした。国子は弁護士を紹介してくれました。弁護士、玲子は、自分を責めるのがDV被害者の特徴だと言い、DVの事例を挙げて説明しました。可穂子は長期自立支援施設のステップハウスに移りました。可穂子は仕事を探し始めました。しかし面接で社長の強い口調に接すると涙が出ます。PTSDを発症していました。

実家では不審な電話に悩まされていました。雄二が可穂子の個人情報をアダルトサイトにばらまき、そうした情報を可穂子の関係先にも配布していたのでした。玲子に頼んで書き込みを削除してもらいました。施設にいつも野菜を届けていた真美は、施設で共同生活をしながら野菜を育てており、可穂子を農園見学に誘いました。真美もまた父親の暴力を受けていました。

その農園、えるあみファームは国子の姉、裕子が運営していました。スタッフは全員女性でした。可穂子は週一度ファームを訪問します。玲子と国子が可穂子を訪れ、雄二が離婚に同意したと言いました、ネットに情報をばらまいた際に足がついたのでした。しかも彼には前科がありました。前にも女性に暴力を振るって書類送検され、示談していました。可穂子ではえるあみファームでの暮らしを始めました。

第二章、ファーム。ファームでの暮らしは順調でした。メンバーは殆どDVの被害者でした。近隣の農家から裕子の噂を聞きます。娘がガソリンで焼き殺されたと言いました。玲子はその話を肯定しました。当時はストーカー規制法もなく、裕子は孤立無援だったと言いました。真美に、裕子はファームを出て自立するよう勧めました。20歳の真美がずっとファームで暮らすのを良しとしなかったのでした。真美は仕事を見つけて自立を目指しました。

由樹が突然ファームに現れ、同居を申し出ました。彼女は彼氏にDVを受けていました。元モデルの美人でした。彼女はルーズな性格でした。スタッフの梢と仲良くなり、一緒に行動します。次第に門限を無視するようになり、梢と外でナンパされたりしていました。ファームの野菜に病害が発生し、みんなはてんてこ舞いになりました。しかし由樹と梢は協力しません。由樹はスタッフのみちるが気にしている宅配業者に手を出し、みちるはファームを出て行きました。ファームの雰囲気は最悪でした。

由樹は勝手に振る舞い、裕子の事はなめ切っていました。梢に風俗の仕事を斡旋しようともしていました。ついに裕子は由樹を切る事にしましたが、由樹はあるものを裕子に示して金を出せと脅しました。それは。。。。

第三章、ベーカリー。えるあみファームは崩壊し、可穂子は国子の紹介でベーカリーでパンを焼いていました。常連客の5歳の杏奈が父親に連れられてやってきました。彼女は小麦と卵にアレルギーがあり、可穂子の作る米粉パンがお気に入りだったのでした。父親の卓也は塾の講師で、杏奈と二人暮らしでした。

可穂子はある時、誘拐されかけていた杏奈を救い出しました。卓也と杏奈はお礼に可穂子を手料理でもてなしました。可穂子は水曜日ごとに卓也と杏奈を訪問し、三人の仲は深まって行きました。そんな中、みちると裕子たちが一緒に下仁田で新たに農園を再開した知らせを受け取りました。真美や梢たちも集まります。可穂子も訪問を約束しました。

その訪問を卓也に告げ、自分の事情を卓也に説明しました。卓也は自分と結婚して杏奈の母親になってくれと言いました。可穂子は下仁田のかたかご農園を訪れました。裕子は末期の乳がんでした。可穂子は自分の結婚話について裕子に報告し、卓也に結婚を承諾しました。

しかし突然雄二が現れました。加害者更生プログラムに参加し、カウンセリングも受けた。自分を許してくれと言いました。可穂子は恐怖に怯えました。国子にも相談し、可穂子は卓也たちと同居を始めました。しかし杏奈がアナフィラキシー発作を起こします。雄二の仕業でした。雄二は空とぼけました。そして杏奈を巻き込んだのは可穂子の方だ、可穂子は今も自分の妻だと言いました。自分はすべて失ったので警察など何も怖くないと言いました。卓也と杏奈を助けたければ戻って来いと言いました。

可穂子は卓也に、雄二が現れた事を告げ、卓也と杏奈を守るためにここを出ていくと言いました。可穂子はかたかご農園を目指しました。雄二に何故こんな事をするのかと尋ねましたが、雄二は、それは自分の愛だからだと言いました。雄二は狂っていました。

第四章、ホーム。可穂子は農園に石窯を自作し、得意の米粉パンを焼き始めました。農作物を卸しているドライブインでパンの試食を始めましたが、チンピラが集まって騒ぎを始めました。そこにさっき試食をしてくれた老婦人が近づいてチンピラを諫めました。チンピラが老婦人の胸倉を掴んだとたんに老婦人はチンピラを投げ飛ばしました。

可穂子は裕子の薬を取りに行った際に、あの老婦人に出くわしました。彼女は合気道の道場主で、可穂子を誘いました。自ら身を守る事も自分の責任なのかと可穂子は思いました。国子から卓也が仕事を辞めて故郷に帰ると知らされました。思わず卓也に電話しました。塾と生徒の家に中傷メールが送られてきたと言いました。可穂子を故郷で待つと言いました。

ひたすらパン作りに打ち込む可穂子でしたが、裕子に過労をたしなめられます。そして何か他の楽しみを持った方が良いと言われ、合気道を習いに行く事になりました。裕子は刑務所に入らないようによく考えろと言い、しばらくして亡くなりました。葬儀をすませ、かたかご農園のみんなは裕子に献杯し、DV男の心理について語り合います。世の中には歪んだ観念を執拗に持ち続ける種類の人間が居るのでした。可穂子は合気道道場に通い、道場主に頼んで護身術を習いました。

ドライブインの店主が評判の良い可穂子のパンを宣伝しようと、可穂子の名前と写真を付けた店の情報をネットにアップしてしまっていました。雄二に見つかったかもしれません。いつまでも逃げ続けなければいけないのかと可穂子は悩みました。やはり雄二は農園に現れました。一緒に帰らなければ仲間を巻き込む事になると脅迫され、可穂子は雄二と一緒に帰りました。雄二は以前のマンションに住み、以前と全く同じように家具などを揃えていました。しばらくは大人しくしていた雄二でしたが、深夜、やはり雄二は暴れ始めます。しかし可穂子は驚きの行動に出て。。。。

DV被害の深刻さを如実に語る作品でした。最後は爽快感あふれる出来栄えでした。やはり唯川先生はプロの作家さんだと思わせる良作でした。





by rodolfo1 | 2020-01-13 06:56 | 小説 | Comments(0)
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