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吉田修一作「愛に乱暴・上巻」を読みました。

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吉田修一作「愛に乱暴・上巻」を読みました。毎回作風が変わる吉田先生ですが、時に男女間のどろどろした関係を粘っこい筆致で描かれます。これはそうした小説の一つです。

第一章、猫を捨てる人。主人公、私は初瀬さんの事を親友の葉月に初めて話しました。葉月の考えではセックスしていない男女の関係は不倫ではありませんでした。しかし私にとっては違います。会いたくて仕方がなければもう不倫です。この愛はもう私たちのものだったのでした。

初瀬桃子は実家の離れで暮らしていました。二世帯で同居する義母、照子との関係は妙にぎくしゃくしていました。夫の真守は週末香港に出張だと言いました。桃子は石鹸作り教室を主宰していました。企画部の浅尾が手伝います。桃子は真守と結婚してから退職し、友人に誘われてこの仕事を始めたのでした。家には野良猫が居つきかかっていました。真守は、猫を拾う事はよくあるのに、猫を捨てた人の話は知らない、とつぶやきました。桃子たちの住んでいる家にはぽっかりと一つ6畳間があり、何にも使われていません。常々それを不審に思う桃子でした。桃子は最近真守に監視されている気がします。浮気ではないようだと桃子は思いました。

第二章、愛、名誉ならびに権力。初瀬さんは私に奥さんの話をしません。後ろめたいのか愛が消えたのかわかりません。わざと奥さんの話題を出し、愛のない夫婦生活に対する安堵と、二人が過ごした長い時間への嫉妬を感じます。夜中にメールすれば初瀬さんは必ず返事をくれます。夜中にメールに返信する夫を見て何も気づかないのだろうかと私は疑問でした。週末は初瀬との旅行が待っていました。

桃子は実家の南軽井沢にある喫茶店を手伝っていました。夕方からはカラオケスナックをしています。真守との結婚が決まり、一度だけ義父母を連れて店に来た事がありました。義母だけはついに店になじまず、田舎の人はああいう雰囲気が好きねとこぼしました。以後両家の両親が顔を合わせる事はありませんでした。真守が帰宅します。トランクを開けると何故か下着だけがきれいに詰めてありました。

第三章、日陰の女。旅行から帰った次の週末、私は初瀬さんに会えませんでした。旅行中初瀬さんが漏らした、「ごめんな、なんか日陰の女みたいで」という言葉が忘れられませんでした。言葉を失った私に、「ちゃんとするって約束するから、もう少しだけ待って欲しい」と言われました。私は葉月と会って、付き合うのは反対だが、応援する、と言われて泣きました。

桃子は浅尾に、以前働いていた会社の人間を紹介してくれと頼まれました。その会社と仕事を企画したのでした。乗り気になっていると突然義母から電話が入ります。真守に連絡がつかない、義父が倒れたと言うのでした。あわてて病院に向かいました。夕方遅くに真守も駆けつけました。義父は脳梗塞でした。看病を始める一家でした。その忙しい中、桃子は何故かあの6畳間の畳に違和感を覚えました。今後の介護の日々の事を考えていると、突然真守に聞いてしまいました。「ねえ、浮気してないよね?」と。真守は、義父が倒れた日に馬鹿な事を言うなと否定しました。

桃子は、同居して8年もたつのに自分は初瀬家の人間ではないと感じました。義父の倒れた日、医者に帰宅するよう促されると、義母と真守は帰ろうとしました。桃子にはありえない事でした。誰かが残るべきだと思いました。やり方が違うのではないかと思いました。

第四章、それぞれのパニック。私は久しぶりに実家に帰って友達に会いました。女友達たちはそれぞれ結婚し、子供を持っていました。結婚しないのかと尋ねられ、あいまいに返事しました。私は初瀬さんの家へ行きました。スーパーから出てくる女がみんな初瀬さんの奥さんに見えました。みんなに怒鳴られそうに感じ、帰りました。

桃子は実家の母に介護生活を愚痴ります。なんでも義母の言うとおりにしろと母に言われ、徒労感に襲われました。固定電話に無言電話がかかってきました。電話の後ろで真守の声が聞こえました。また、桃子が見ていたテレビ番組のナレーターの声も聞こえていました。真守のいる部屋でもそのテレビが映っていたのでした。真守に帰宅時間をメールで尋ねると、同僚と飲みに行くから遅くなると返事がありました。その同僚の家に電話しようかと迷い、何故か桃子はハサミを使って例の6畳間の畳をみな持ち上げました。荒床が見えました。上に古新聞が敷いてありました。平成15年1月の新聞でした。真守からメールがあり、早く帰るので話があると言われました。

桃子は倉庫の南京錠をレンガで壊し、大工道具を取り出しました。釘を抜いて床板を外しますが、期待していた床下は見えず、ベニヤ板が張られているのを見ました。
ベニヤ板を破ろうとしましたが、義母に呼ばれました。あわてて片付け、義父の事を尋ねてごまかしました。真守は、今日電話があっただろうと尋ね、あいつが何を言ったのか知らないが、まずは謝る、と謝りました。そして女とは別れると言いました。

第五章、高熱の夜。私は困惑していました。初瀬さんに頼んで、私の事を奥さんに話してもらったのでした。それから奥さんは初瀬さんに粘着し、行動を監視していました。それから会えていませんでした。私は妊娠したのでした。

桃子は突然高熱を出しました。失神し、気づくと義母が看病してくれていました。その最中に真守は、彼女に一度三人で会ってくれと言い出しました。桃子は断りました。医者へ行って薬をもらいますが、全身にひどい湿疹が出ました。気遣う真守に、桃子はあの女に会う、と言いました。桃子は別の病院に行き、小康を得ます。

第六章、町医者の診断。私はお腹が痛くなり、初瀬さんと一緒に病院へ行きました。赤ちゃんは無事でした。初瀬さんは初めて泊まってくれました。

桃子は日曜大工コーナーに寄り、床板を自分で剥がしたい、と言います。店員はチェーンソーを勧めて来ました。さすがに躊躇して帰宅すると、横浜に住む義父の従妹が義父の見舞いの後、照子を訪ねて来ました。彼女は時枝おばさんの話を義父とした、と言いました。時枝は実は桃子たちが住んでいる離れで暮らしていたのでした。実は時枝は義祖父の二号で、義父は時枝の息子でした。跡継ぎとして義父は実家に入りました。

第七章、ママと呼ぶパパ。私の元に葉月が遊びに来ました。妊娠の事は葉月に話していました。もうすぐ奥さんと初瀬さんと三人で会う予定でした。初瀬さんは私のお腹に耳をあてて、何が聞こえるの?と尋ねると、ママには内緒、と言いました。

桃子は合鍵で母屋に入りました。古いアルバムを見ます。時枝が写っていました。桃子は時枝の写真を盗みました。石鹸教室に復帰し、浅尾と浮気の話をしました。桃子はチェーンソーを買いました。野良猫を家に迎え入れました。

第八章、不審火が続く。私は初瀬さんと奥さんと三人で会う事になりました。どうしても子供を守ると誓いました。

桃子はチェーンソーを開封していました。真守からメールがあり、明日女と三人で会う事になりました。チェーンソーを構えていると、警察官が訪問して来ました。近所で不審火があったので聞き込みに訪れたのでした。特に思い当たる事はない桃子でした。

第九章、他のお客様もおられますので。私は初瀬さんが私と一緒に奥さんを待つべきだと思っていました。愛されている私と赤ちゃんを思い、堂々と二人を待とうと思いました。

桃子と真守は一緒に出かけました。真守は、彼女には子供がいる、と初めて打ち明けました。嘘だろうと桃子は言いました。三人は初めて会いました。桃子は女に真守と別れろと言いますが、真守は、女と子供とこれからの人生を送りたいと言いました。そして桃子に二人で頭を下げました。動転する桃子に、真守は、話し合えないんだったら出て行けと言いました。

第十章、猫の出入口。初瀬さんの奥さんはとても冷たい感じの人でした。私は彼女が何を言っているのか頭に入りませんでした。

桃子は野良猫に餌をやっていました。真守は帰って来ませんでした。78回電話しましたが、真守は1回も電話に出ませんでした。メールが返って来て、しばらく戻らないと言いました。義母は、誰かが母屋に入っている気がすると言いました。不安がる義母に、桃子は母屋に泊まると言いました。





by rodolfo1 | 2020-01-24 02:44 | 小説 | Comments(0)
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