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吉田修一作「愛に乱暴・下巻」を読みました。

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吉田修一作「愛に乱暴・下巻」を読みました。

第十一章、夫の歩き方。私は幸せの絶頂でした。初瀬さんは毎日一緒にいてくれます。今回の別居は奥さんから言い出したものでした。離婚までの時期を一緒に過ごしたくないそうでした。私と初瀬さんは、子供の名前で悩んでいました。

桃子は真守の会社の前で真守を待ち伏せます。後をつけて女の家を突き止めました。しかしこの日は帰りました。帰宅し、床板をチェーンソーでついに切断しました。桃子は興奮します。6畳間の畳の下にぽっかり穴が開いているのだと思うとストレスが解消されたのでした。そして明日は女の家に行ってみるつもりでした。

第十二章、軽い。軽い。軽すぎる。私はショックを受けていました。稽留流産したのでした。初瀬さんにどう伝えたらよいのかわかりませんでした。

照子は、真守から話があるから今晩家に居てくれと言われたと桃子に言いました。何の話か聞かれ、家のリフォームの話だろうとごまかしました。真守に電話すると、どういう状況なのか話すと言いました。桃子は怒り狂いました。真守は、しこりを残したままのお前との生活には疲れた、奈央と子供と一緒に今後は暮らすと言いました。この人はいつもこうだと桃子は思いました。自分の気持ちだけが大事で、いつも何かを終わらせて何かを始めてしまうのだと思います。軽すぎる、と思いました。そして真守は出て行きました。

桃子は6畳間の床下を一晩中掘っていました。浅尾を紹介した元の会社の元上司に、復職できるか尋ねると、快諾されました。そういえば長い間葉月に会っていなかったと桃子は思いました。今の状況を話したらどう言われるのかと桃子は思いました。

第十三章、桃子の日記。私=桃子は初瀬さんの離婚を受けて、初めて義母の照子と会いました。お腹に赤ん坊がもう居ない事をどうしても初瀬さんに言えませんでした。照子は、今初瀬さんが暮らしているマンションを引き払って、実家の離れで暮らして欲しいと言いました。桃子は同意しました。

桃子が掘った土を運び出して6畳間に戻った時に、突然真守が帰宅しました。桃子はなぜか穴に降り、畳でふたをしてしまいました。真守と照子は、離れで話を始めました。真守は、桃子と別れるつもりだと打ち明けました。そしていつもいなくなっていた子供の事が引っ掛かっていたと言うと、照子も、初めて会った時に流産していたくせに私たちを騙していたのは頭に来ると言いました。真守はもう別の女がいて、その相手の腹に子供がいる、と言いました。照子は呆れますが、お父さんに話してみる、と言いました。床下で、桃子は陶器が埋まっているのに気づきました。古い新聞紙が入っていました。

第十四章、助けて下さい!。私、桃子はどうしても赤ん坊がいない事を初瀬さんに言えません。自分が卑怯な事をよくわかっていました。桃子は結婚式を挙げない事にしました。

桃子は女、奈央の家を訪れました。桃子は奈央に文句を言います。子供を堕ろせと言いました。桃子が家から飛び出ると、私は産みますからといって奈央が追いかけて来、階段から転げ落ちました。桃子は助けを呼び、近所の男に病院まで奈央と連れて行ってもらいました。後刻、また奈央と話をしなければいけないと思う桃子でした。

第十五章、孫のお嫁さん。桃子は初瀬さんを始めて軽井沢の自宅へ招待しました。まだ赤ん坊の事を初瀬さんに話せませんでした。初瀬さんは子供の事を両親に話したそうでした。

桃子は横浜の親戚、すみ江の家を訪問しました。時枝おばさんと呼ばれる義父の実の母親が、放火魔の疑いをかけられた事があったと漏らしました。犯人は結局見つかりませんでした。桃子の中で何かがつながりました。そういえば最近桃子の家にも不審火の捜査で警官が訪問してきていました。家へとって返して例の壺の中の新聞紙を検めました。そこには放火事件の記事が載っていました。時枝が放火したかもしれないその炎を想像して桃子は興奮しました。真守にそれを報告しようと電話すると、もう奈央には会うなと言われました。

第十六章、私、聞いてたんです。明日婚姻届けを出す前日にとうとう桃子は流産の事を初瀬さんに泣きながら告げました。

桃子は元上司に正式に再就職を頼みに行きました。人事部に相談するという元上司と別れ、トイレに入ると、会社の女子社員二人が桃子の事を話しているのが聞こえました。そんな再就職はありえないと言って二人はせせら笑いました。帰宅して料理をしていると照子が現れ、二人で良く話し会えと言われました。桃子は、真守と照子の話を床下で聞いていた、と言いました。変な話で話をはぐらかすなと照子は怒ります。もともとは桃子が流産を正直に話さなかったからしこりが残ったのだと言いました。私が悪いんですかと桃子が聞くと、真守は悪くないと照子は言いました。時枝の放火の話を照子にしかけますが、取り合ってもらえませんでした。

第十七章、深夜の帰宅。桃子は照子たちに会わせる顔がないと言いますが、真守はだいじょうぶだと請け合いました。照子はいたわってくれました。良い嫁になる、と桃子は誓いました。

翌日照子は、昨日は言いすぎたと桃子に謝りました。桃子は実家に帰ると何故か照子に言ってしまい、快諾されました。実家に戻ると、真守から電話がありました。照子に聞いたが、床下に隠れるとか、居もしない場所に居たと言うとか、様子がおかしいのではないかと言います。電話を切った後、桃子は突然焦りだしました。どうしても帰りたくなったのでした。もしかすると真守が女連れで帰宅しているかもしれません。帰らないとあの家を追い出されると思い込み、居てもたってもいられず、実家の車を借りて強引に帰宅します。母親がついて来てくれました。帰りの車内で母親が、何かあったのかと聞きました。桃子は何も言えませんでした。

第十八章、警察呼びますよ!。桃子は離れに荷物を運びこみました。いよいよ同居が始まるのでした。手伝いに来てくれた母親は、あのお義母さんと暮らすのは大変そうだとつぶやきました。

車で帰宅した翌朝、母親が照子にあいさつに行くと、戻ってきた母親は激昂していました。桃子の頭がおかしいと言われたのでした。そして6畳間へ入って畳を検めると、穴を発見されました。チェーンソーを持っているのも知られていました。不在の間に照子が離れに入ったのでした。桃子が文句を言いに母屋に行くと、照子はドアを開けませんでした、そして警察を呼ぶと言ったのでした。桃子はすべてを母親に打ち明けました。床下についても気になり始めたらもうどうしようもなかったと言いました。

なんとか桃子が発狂していないことを母親は納得しましたが、戻って来いと言われました。嫁の苦しい気持ちを理解もせず、悪いことばかり妄想する照子の方が悪いと言いました。桃子はそのまま軽井沢に戻りました。毎日実家の喫茶店を手伝いました。

真守から手紙が届きました。桃子のやったことをあげつらい、もう話し合いは無理、とありました。桃子は婚家に戻りました。葉月に連絡し、彼女からは、もらうものは全部もらって別れろと言われました。

第十九章、悪いのは俺。桃子は同居後初めての真守の出張の日に夕食に母屋に呼ばれました。照子は前の嫁の事をこぼしました。

帰宅後、桃子は真守に連絡し、真守は夜来ると言いました。何が不満だったのかと真守に聞くと、全面的に自分が悪いと真守は言います。でも奈央との生活を選びたいと言いました。桃子は、真守は、単に実家に戻って楽に暮らしたかっただけだと言いました。桃子は、自分が何のためにがんばってきたのだと思っているのだと聞きます。何のためだ、と真守が聞き返すと、負けたくなかった、と桃子は言いました。何に?誰に?と自分自身に問いかけますが、答えはありませんでした。

照子には、もう見舞いも家事手伝いもしなくていいと言われました。居もしない時枝おばさんに向かって、照子たちは桃子の気が変になっていると思っていると言って笑います。おばさんも、正気じゃないと言われてそれを面白がって火をつけて正気じゃないふりをしたのかと言いました。やおら桃子はハムを手づかみで食べ始めました。その独り言を照子が母屋で聞いていました。おかしなふりをするのも結構疲れると桃子は言いました。

桃子はこれまでの8年間の日記を読み返しました。桃子はいつも人生を肯定しようとがんばってきましたが、ずっと幸せな女のふりをしていただけかもしれないと思いました。あの馬鹿が、と真守の事を思います。あの馬鹿が本当に馬鹿だと気付くためだけに、この8年を過ごしてきたのだろうかといぶかります。もう本当に駄目かもしれないと思う桃子でした。

第二十章、ありがとう。不審火の犯人はまだつかまっておらず、夜警団が近所を見回っていました。真守からは長い手紙と離婚届けが届きました。桃子は手紙を丸めて火をつけました。桃子は日記帳をつかんで、チャッカマンを持って外に出ました。すると突然目の前に。。。。。

女と桃子二人の日記で綴られると思っていたこの小説は、実は桃子一人の過去と現在の日記でした。そこがまず小説の骨子として大変興味深い作られ方でした。いくつもの伏線が実は張られており、最後は桃子にも救いがもたらされます。桃子が追い詰められていく模写も鋭い。さすがは小説の名手、吉田先生の力作だと思いました。



by rodolfo1 | 2020-01-25 02:49 | 小説 | Comments(0)
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