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凪良ゆう作「わたしの美しい庭」を読みました。

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凪良ゆう作「わたしの美しい庭」を読みました。

第一章、わたしの美しい庭・Ⅰ。統理と路有、10歳になる百音の三人はゆるい共同生活を送っていました。百音の父母は既に亡くなり、亡き母親の元夫であった統理が行先の無い百音の面倒を見ていました。統理は翻訳家兼神主です。ビルの屋上に神社があり、階下を縁切りマンションと仇名されるマンションにして賃貸に出していました。路有はゲイでした。おしゃれな屋台バーのマスターをやっていました。

統理と百音は一緒に暮らし、路有はマンションの賃貸人です。手ひどく元恋人に振られ、やけになっていた彼を同級生だった統理が救いました。それから統理のマンションに転がり込み、明け方バーを仕舞うと、朝食を作って統理と百音に振舞います。夕食は統理の当番でした。神社は縁切り神社でした。悪縁を断ち切るところでした。神社の前には美しい庭が屋上一面に広がり、百音はそこが大好きでした。普通ならありえない関係の三人は、大変楽しく一緒に暮らしていたのでした。

第二章、あの稲妻。桃子は病院の事務員でした。39歳独身の桃子は病院ではお局ポジションでした。下からは突き上げられ、上からはプレッシャーをかけられていました。桃子もマンションの住人でした。統理、百音、路有達とは仲良くしていました。桃子の元に見合いの話が来ます。嫌々見合いに出かけますが、相手に断られました。桃子は路有のバーにたまたま行き会い、一杯やりました。

ある日、嫌な事があり、路有のバーで飲みたくなって路有に電話すると、今日は休みで三人で中華料理屋に行くから一緒に来ないかと誘われます。桃子は一緒に出掛けました。路有の元カレの話が出ます。同棲していたその彼は、女性と結婚すると言って路有と別れたのでした。桃子は三人から、線香花火の会に誘われました。ドレスコードは浴衣でした。実は桃子には思い出の浴衣があり、今でも捨てずにずっと取ってあったのでした。当時の彼氏、坂口君と夏祭りに行くのに着て行くはずでした。しかし坂口君は。。。。

第三章、ロンダリング。路有のバーには深夜、近くのキャバクラで黒服をやっている男、トワが通って来ます。トワさんもゲイでした。なんとなく二人は惹かれ合っていました。しかし別れた元カレから残暑見舞いの葉書が届きました。元カレとの別れを思い出して路有はうんざりします。ハガキを捨てようとしますが、思い切れない路有は元カレに会いに行きました。元カレはファンシーな一軒家に住み、奥さんは妊娠していました。現れた路有に元カレは驚きました。

元カレは、子供を持つのが恐ろしい、よりを戻して一緒に逃げてくれ、と路有に頼みました。しかし子供のために煙草を止めたと聞いた路有は、怒り心頭でした。自分がいくら頼んでも、元カレは決して煙草を止めなかったのでした。一旦家に戻った路有は、縁切りに使う形代を統理に貰います。元カレに断ち切りたい縁を書かせます。それには逃げ癖、とありました。形代を統理に切ってもらい、二人は酒を酌み交わします。統理は自分の離婚の話を始め。。。。

第四章、兄の恋人。基は鬱病にかかり、ばりばりこなしていた仕事を休職していました。実家に帰り、親と同居を始めました。近所のメンタルクリニックに行くと、事務員に声を掛けられました。兄の恋人だった桃子でした。東京に住む恋人の真由からは時々電話を貰いました。基は兄の墓参りに出かけました。そこで同じく兄の墓参りに来ていた桃子と出会いました。

桃子さんとは、兄が企画した肝試しが怖くておしっこを漏らしたパンツを替えてもらった仲でした。見栄を張る仲ではありませんでした。桃子に鬱の事をこぼしました。基は昔から真面目な子供だったと桃子に感心され、基は戸惑いました。自分は宝くじがあたったら、仕事を辞めるのだけが楽しみだと桃子は言いました。基は桃子について縁切りマンションを訪れます。そこには統理たちが待っていました。統理は亡き兄の事をよく覚えていました。

たまたま夜の散歩をしていると、路有のバーに行きあいます。たまたま一杯やってしまい、バーで盛り上がった所に真由から電話が入ります。賑やかな様子を電話で聞いて、真由は怒ります。こんな時に何を遊んでいるのだ、酒は鬱に悪い、もっと将来を考えろと言いました。ひたすら謝る基は、東京まで真由に会いに行きました。しかしそこで見たものは。。。。帰宅した基は路有のバーで荒れました。泥酔した基を見て路有は桃子を呼び、桃子は死にたいと叫ぶ基をビンタしました。基は泣き出しました。。。。

第五章、わたしの美しい庭・Ⅱ。夏休み明け、学校に登校した百音は、道徳の時間に、思いやりとは自分が嫌な事を他人にしないことだと習いました。しかし百音は、その授業に納得がいきませんでした。みんなは自分の親の嫌な事を話しますが、百音には両親がいない事に気が付き、口々に謝りました。百音にはその思いやりが嫌でした。

路有に、自分は両親を持っていないから可哀そうなのかと聞き、路有は、持っていない事で得られる物もあると言いました。統理も、ぼくたちは違うけど認め合おう、という所まで授業を進めてもらいたいと言い、路有も、それでも認められない時は、黙って通り過ぎようを次の次の目標にしてもらいたいと言いました。百音は、誰と誰が手を取り合ってもいいという考えが世界を救うのだと考えました。それはかつて統理が、初めて百音に会った時に、おじさんは百音の何?と聞かれて言った言葉でした。今では百音はその言葉の意味がわかったのでした。

基と桃子が神社にやって来ます。基は再就職の斡旋、桃子はお見合いの斡旋と書いた形代を切ってもらいに来ていました。百音は、へんな思いやりという言葉を切ってもらう事にしました。。。。

いやいやこれもまた素晴らしい作品ですね。この作家さんの描くキャラクターはとても良く立っています。しかもプロットがとても今日的です。登場人物の語る数々のエピソードも、いちいちうなずけるものばかりでした。久々の当たり作家の登場にわくわくしている私でした。



by rodolfo1 | 2020-04-12 02:53 | 小説 | Comments(0)
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