後藤篤子は夫の章と、長女さやかの結婚式の費用負担で揉めていました。見栄張りな夫は後先考えずに金を使いたがりますが、老後資金となる金が1000万強しかない後藤家に、300万円の負担はしんどいものでした。しかし冴えない長女がやっと見つけた夫の琢磨は、地方の有名スーパーのオーナーの長男で、沢山の招待客を予定しており、結婚式場も一流どころを指定されてしまっていました。夫の両親の家への月9万円の仕送りも負担になっていました。 長男の勇人は翌年卒業で、就職先も決まり、家を出る予定でした。家計は楽になるはずで、思わず黙って300万を出そうかとも思う篤子でした。篤子の唯一の趣味はフラワーアレンジメントでした。その教室でサツキと友達になりました。講師の城ケ崎綾乃は、優雅という言葉を体現した老女で、篤子達は憧れました。サツキはパン屋を経営していました。サツキは長男の結婚式に融通する金は30万だと言い、篤子は焦りました。 後藤夫婦は九十九里へ向かっていました。舅が危篤で、義妹の志々子から呼び出されたのでした。志々子の夫秀典は、研究職で、高額所得者でした。舅夫婦は元は浅草の有名な菓子屋を営み、引退後は浅草の店を売って、2億円近い老後資金を持って志々子の住む九十九里の高級ケアマンションで何不自由無い暮らしを永年続けた結果、全ての資金を失って今は年金と、志々子と篤子達の仕送りで生活していました。月9万円の負担は重いと篤子は志々子に訴えますが、志々子達は介護費用をもっと多く負担していると言い、減額は受け付けられませんでした。更に、舅の葬儀費用は篤子達が負担しろと言い、あっさり夫は受け入れました。 勇人は結婚式の費用がおかしいと姉に言い、結婚式の明細も見せない夫の琢磨もおかしいと篤子に言いました。勤めている会社も零細で、実家からの仕送りも望めないに違いないとも言いました。不安になる篤子でした。しかし篤子は突然会社をリストラされました。新しい就職先は見つかりません。 さやかが結婚式を挙げました。挙式と披露宴、新婚旅行、新居の準備などで、500万円もかかりました。老後資金は6000万円いると言われて篤子は焦りました。舅が亡くなり、盛大に浅草で法要を営みましたが、誰も参列しませんでした。300万円以上もかかりました。貯金は激減しました。サツキとその話をします。サツキの舅は葬式に金をかけない主義で、25万円しかかからなかったと言いました。更に夫の章の会社は倒産し、退職金も出ませんでした。さやかは実家に寄り付かず、たまたまあった電話で、頬をはたかれたらしい音が聞こえ、そのままさやかは電話を切りました。 勇人と篤子はさやかのマンションを訪れました。部屋から怒鳴り声が聞こえましたが、隣人はいつもの事だと言いました。さやかはやっとドアを開けましたが、篤子達に取り込んでいるから帰れと言い、篤子達はDVの気配に怯えました。勇人はDVの洗脳はなかなか解けないと言い、その日はそのまま帰りました。篤子はさやかの離婚を予想し、何の資金援助も出来ない自分達に歯噛みする思いでした。 アレンジメント教室では、講師の城ケ崎の面やつれを皆が心配しました。いつものようにお茶をしようとしていた二人に、新入会員の美乃留が声をかけ、一緒にお茶をしました。富裕層の美乃留が二人を連れて行ったのはホテルのアフターヌーンティーで、あまりの料金の高さに呆れる二人でした。美乃留は何事かを拘泥している様子でした。章は再就職先を探しますが、なかなか見つかりません。 突然実家にさやかが顔を見せました。ふくらはぎに痣を見つけました。困っている事はないかと尋ねますが、さやかは否定して帰宅しました。DVの事を聞きましたが、さやかは否定しました。篤子は老後の資金についての講演会に出かけましたが、そこでサツキと美乃留にばったり出会いました。美乃留は夫の浮気相手に子供が出来、子供が出来なかった為に家を追い出されかけていたのでした。三人はサツキのパン屋に向かい、そこでご近所さんに、最近顔を合わせなくなったサツキの姑について尋ねられ、サツキは口を濁しました。 篤子は、章に9万円の仕送りを止めると義妹の志々子に言えと迫り、見栄張りの章は篤子に任せてしまいました。仕方なく篤子は志々子に電話し、夫婦がリストラされた事を話して姑をケアマンションから退所させて在宅介護に切り替えろと言いました。志々子と言い合いになった篤子は、ついに姑を自宅に引き取ると宣言し、姑はあっさり同意し、引っ越して来ました。 篤子はついに諦めてコンビニのレジ打ちのバイトを始めました。立ち仕事はきついものでした。のんびり失業保険をもらって過ごしている章の世話をしなくなりました。姑は妙に開けた様子で、家事をせっせと負担してくれるようになりました。そんな中、サツキから意外な依頼がありました。姑にその依頼を相談すると、姑は俄然乗り気になり、その依頼を受けてしまいました。以後、篤子の運命はどんどん新しい方向に転がって行き。。。 垣谷先生の小説は、一見地味のようでいて、意外にしぶとい作風です。キャラクターがきっちり作りこまれていて、出だしはいつもはなはだ地味ですが、意外なトリックと結末が用意されており、常に女性が活躍するあたりは胸のすく良作ばかりです。実に味のあるキャラクターである姑を、映画では草笛光子さんがやられるのだとか。是非見に行こうと思う作品でした。
by rodolfo1
| 2020-09-10 02:21
| 小説
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