【第一章 "素晴しき哉、人生"】この本は、重さ500gくらいのある鳥の一生の物語です。作者は彼を失って初めて彼の影響の大きさに気づかされました。まずニューヨークタイムズ誌に署名付きの訃報が載せられました。彼は色や形を言い当てる事が出来、100語以上の英単語を使いこなし、独特のユーモラスな台詞はテレビ番組や科学論文、ニュース記事にたびたび登場したので、話すことのできる鳥類としては彼は世界一有名でした。彼は動物の思考という能力に関する常識をも書き換えたのでした。しかし作者は、それらのインタビュー仕事の合間は、ただただ悲嘆にくれていたのでした。 ネイチャーやエコノミストにも記事が乗りました。アレックスには人間の5歳児くらいの知能があり、まだまだ発展する余地が残っていたとありました。作者はアレックスの死とともに、30年間押さえつけていた自分の感情を初めてあらわにしました。アレックスは研究対象であって、単なるペットではないという考えから、作者はアレックスへの感情を隠していたのでした。アレックスの死を悼むものすごい数のメッセージが届きました。 アレックス財団の資金集めパーティーの席上で作者はスピーチします。届けられたアレックスを褒めたたえるメッセージを紹介しながら、さまざまな誹謗中傷にも悩まされた30年間の道のりを思い、そうしたメッセージに示された、人々が苦しかった時に、いかにアレックスに助けられたかという事に気づきました。アレックスが死んで初めて作者はその事に気づいたのでした。作者の、あの名作映画"素晴しき哉、人生"的な原点への気づきであったのでした。物語はこの原点から始まって行きます。。。 【第二章 私の原点】作者は孤独な4歳の少女でした。回りには誰も話し合える友達がいませんでした。しかも母親はいわゆる冷蔵庫マザーであり、作者への接し方はとても冷たいものでした。父親も忙しく、朝しか会えませんでした。そんな中、一羽のセキセイインコをプレゼントされました。初めて出来た仲間でした。作者とインコはボタンやタイプライターで一緒に遊びました。 両親から何の躾けもしてもらえなかった作者は5歳で初めて学校に行きました。クラスで白人は作者だけでした。学校へは通えず、転校を余儀なくされ、一家は引っ越しました。新しい家は窓からバードウォッチングが出来る素敵な家でした。しかし両親は次第に不仲になっていきました。しかも学校では2級も飛び級し、クラスで一番小さい女の子でした。作者は大層頭が良かったのでした。その事に作者は次第に自信を持ち始めていました。化学に才能を発揮しました。 高校3年の時に、大学の化学の授業を受けに行きましたが、その教室にインコが迷い込み、大騒ぎになるかに見えましたが、ずっとインコを飼い続けていた作者は慌てずインコを捕獲し、事なきを得ました。何か作者のこれからを暗示するような事件だと感じました。進路に悩み、ついに女だてらにMITへの進学を決めました。16歳にして男社会の巣窟として悪名高いMITに入学したのでした。大学生活は大層厳しく、金銭的にも痛手でしたが、作者はなんとかやり遂げました。しかも彼氏まで出来ました。 作者はハーバードの大学院へ入学し、婚約して同棲しました。しかし作者の化学熱は冷め始めました。なんとしても就職状況が悪かったのでした。折柄火事に遭い、焼け出された二人は友達の家に居候します。義務としてベビーシッターをしている時に、あるテレビ番組を見て、イルカやチンパンジーが人間とコミュニケーションする所を見ました。動物の思考方法を研究する事が自分のすべき事なのだと作者はついに気づいたのでした。 驚いた事に、家主はハーバードの生物学の教授で、ハーバードではそうした研究がなされていると言いました。作者はその研究に飛び込み、自分の扱う動物をヨウムに決めました。作者はヨウムに対して絶対に感情的にならないと決心しました。ヨウムは知能の高い研究対象の動物だったのでした。作者はパデュー大学生物科学部へ就職を決め、ペットショップへヨウムを買いに行きました。家族から独りで引き離されたそのヨウムは誰にも心を開きませんでした。アレックスとの出会いでした。 【第三章 はじめての発話】なかなか懐かなかったアレックスでしたが、紙をかじるのが好きでした。作者は、ペーパーという単語を教えようとします。アレックスは数週間かかって、次第に物の名前を覚え始めていました。フルーツを食べてくちばしが汚れるとアレックスは紙で拭きたがりました。ある日、その紙を与えるのを忘れていると、アレックスは不満顔になり、エ-・ア-と言って紙を要求したのでした。アレックスと作者は一進一退を続けながら学習を続けました。 ついにアレックスはキーという単語をマスターしました。ペーパーも言えるようになりました。アレックスは作者を信頼し、後に出現した強気な性格の片鱗が現れるようになってきました。しかし何も研究実績の無かった作者は雇用問題や、実験費捻出に苦労しました。また、当時主流だった研究方法ではなく、ドイツ人研究者が提唱したモデル/ライバル法を改良して導入しました。しかし作者は、単なる単語の発語よりも、ヨウムに単語の意味を理解させる事が重要だと考えました。作者の目指した物は、ヨウムが認知能力を持っている事を証明する事だったのでした。 研究費はなかなか得られませんでしたが、作者は更に研究を加速しました。アレックスは7つの物体を理解し、その形の把握にも成功しました。3色の色を見分けられました。また、アレックスは「ノー」を覚えました。お気に入りの新品のコルクをもらえるまで、延々とノー!をくり返したのでした。 【第四章 さすらいのアレックスと私】いよいよ作者は論文を書き始め、サイエンスやネイチャーに投稿しましたが、査読もされずに返送されました。アレックスに文節を教えました。大好きだった木製の緑色の洗濯ばさみを見せると、グリーン。ウッド。ペグウッド、と正しく答えました。アレックスは文節を理解していたのでした。作者は初めて研究費を実力で勝ち取りました。 この頃は、類人猿と人間のコミュニケーションに関する論争が激しくなっていました。しかも、動物の言語と思われていたものは、すべて言語ではなく、人間が発する合図を動物が理解して言語のように見せていただけだという論調が支配的になっていました。学会から作者がうちひしがれて戻ると、アレックスは無邪気に「コッチキテ、アイ・ラブ・ユー」と迎えてくれました。研究環境は劣悪で、作者とアレックスは何度も引っ越しを余儀なくされました。しかし少しずつメディアへの露出は増え、批判や中傷を浴びながらも賛同者を増やしていきました。アレックスは、色や形などのより抽象的な概念を理解し始めていたのでした。。。 しかしアレックスはものをかじるのが大好きで、研究室に独りにしておくと、とんでもないいたずらをしでかします。電話線や大事な書類をめちゃめちゃにしてしまい、作者にこっぴどく怒られました。するとアレックスは少しすくんだような様子をして、「アイム・ソーリー」と何度も謝りました。。。しかし本当に謝っているのだろうかと作者はいぶかります。アレックスは他の研究者にもアイムソーリーを言います。どういう理由で言っているのかはついに不明なままでした。 【第五章「バネリー」って・・・・?】アレックスは次第に暴君ぶりが目立つようになりました。自分の要求を全部容れないと研究に参加しなくなったのでした。作者はリンゴを教えようとアレックスにリンゴを与えましたが、アレックスはさっぱり食いつきません。ところがある日、リンゴを熱心に凝視した後、アレックスは、バネリー、バネリーホシイと言ってリンゴをむしゃむしゃ嬉しそうに食べました。 作者はアレックスに、違うでしょ、アッ・プ・ルと教えると、アレックスはバ・ネ・リーと同じく一音節ずつで返しました。しばらく押し問答をしましたが、お互い引き下がりませんでした。言語学の専門家に聞くと、アレックスはバナナとチェリーを合わせて造語したのではないかと言われ、作者は驚きました。 次第に作者の論文は学会誌に掲載されるようになり、アレックスも忙しく実験に参加しました。賢いヨウムはすぐに同じ実験に飽きてしまい、それなのに論文の為に何百回と同じ実験をさせられるアレックスは可哀相だと作者は思いました。アレックスはわざと答えを間違えたりはぐらかしたりをくり返します。かなり高次の認知機能を実は有しており、自分たちをからかって遊んでいるのではないかと作者は疑いました。しかし最終的には統計学的に意味のある答えを得られました。アレックスは確かに理解していたのでした。。。 次に作者は、「同じ/違う」を理解するかどうかを検討しました。それをクリアすると、次は大きさの違いを認識するかどうか試しました。アレックスはこれもクリアしました。テレビの取材を多く受けるようになりましたが、私生活では夫と不仲になり、資金面でも難航します。しかしアレックスは永続性の理解、という実験の新たな局面に進んでいました。あるものが目の前からなくなっても、そのものが存在している事を理解する事でした。 しかしアレックスは肺アスペルギルス症に犯され、生死の境をさまよいました。手術を受け、やっとの事で回復しました。病院でスタッフをかまいます。アレックスはナッツ ホシイ?と聞き、スタッフはいらないと言いました。コーン ホシイ?とまた聞きました。いらないというスタッフに、アレックスはキレて、ジャア・ナニガ・ホシイ?と叫び、やっとスタッフに構ってもらったのでした。 【第六章 アレックスと仲間たち】作者のユニークな研究内容を理解する大学はなかなか無く、不仲の夫ともついに離婚になりました。やっとアリゾナ大学に准教授のポストを得ました。アスペルギルス症の事を考え、ヨウムを2匹増やしました。スタッフと学生20人程を使い、ヨウムの訓練を始めました。アレックスは漸く体力回復し、数字の理解を深めさせようとしました。また、ヒナ鳥のグリフィンを研究室に迎えました。 育ったグリフィンはアレックスと言葉の掛け合い遊びをして遊びました。しかしアレックスを自宅に連れ帰ったある日、アレックスは大変怯えてカエリタイ!と連呼し、ついに研究室に戻りました。家にコノハズクが巣を作っていたのでした。カーテンで窓を隠しても駄目でした。それがアレックスが、対象の永続性を理解している証拠だったのでした。 【第七章 IT化の波に乗って】作者とアリゾナ大学との関係は悪化していました。作者はいわゆる有名教授ではなく、彼女の名前で多くの学生を集められなかったからでした。ストレスがいや増します。いらついていた作者にアレックスはオチツイテ!と声を掛けます。しかしいらついていた作者は、私に向かって落ち着けなんて言わないで!と怒鳴ってオフィスに引きこもりました。ニューヨーク・タイムズにその事をすっぱ抜かれ、博士とアレックスは時々老夫婦のような喧嘩をする、と書かれました。。。 MITのメディアラボから講演の依頼が舞い込みました。メディアラボは当時大注目されていた話題のラボで、世界のテクノロジー産業とコミュニケーション産業におけるトレンドを決定づけるほどの施設でした。講演後、ラボで働く事をオファーされ、作者は舞い上がりました。ラボの人々は、コンピューターが学習する仕組みをヨウムの学習からヒントを得たいと思っており、作者は、すぐに実験に飽きてしまうヨウムを退屈させないようなテクノロジーがラボにあるかもしれないと考えたのでした。ITバブルの波に乗って、資金はいくらでも入って来ました。 作者はインターペット・エクスプローラーを作り、アレックスはその機械で一人で楽しく遊んだのでした。アレックスは音素への研究にも取り組みました。しかしITバブルは弾け、作者はラボを解雇されたのでした。。。 【第八章 新境地】アレックスとグリフィン達はラボを出され、作者の知り合いに預けられていました。作者はやっとブランダイス大学に籍を置き、研究室を立ち上げ、3羽はそこに移りました。アレックスは数字を理解するようになっていました。ゼロという概念を理解していた節がありました。彼が自分で考え付いたのでした。足し算も出来るようになっていました。等価概念については素晴らしい理解力でした。錯視の研究もアレックスは人間と同様である事を示しました。しかしそのアレックスは。。。最期の言葉は。。。決してヨウムに心を開かなった筈の作者は。。。 【第九章 彼が教えてくれたこと】アレックスが作者に教えてくれた事はたくさんありました。根気強く取り組む事、動物の思考が驚くほどヒトに似ている事、アレックスは私たちがいかに動物の心について無知で、どれだけ研究の余地が残っているか教えてくれました。ホモ・サピエンスが動物種のどのような位置にいるのか、どのように他の動物種と関わっていくかを教えてくれました。従来人間は、自分達だけが優れた種である事を示すのに言葉を以てしていました。アレックスは人間と動物の間の垣根を取り除き、人間と動物の新たな関わり方を教えたのでした。 最後に作者は、有名な映画、愛と哀しみの果て、から最後の台詞を引用します。曰く。 「彼はわたしたちのものでもなかったし、私のものでもありませんでした。 私たちのもとへ彼を遣わしてくださり、感謝します。 彼は、私たちに多くのよろこびをもたらしました。 私たちは、彼をとても愛しました。」
by rodolfo1
| 2021-01-25 02:03
| 小説
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