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中山七里作「ラスプーチンの庭」を読みました。

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中山七里作「ラスプーチンの庭」を読みました。今回のテーマは標準医療の問題点と民間療法の実態です。

【一 黙示】汲田姉妹は有名な仲良し姉妹でした。姉のグーちゃんは献身的に妹のユーちゃんの面倒を見ました。しかし幼稚園で男の子に苛められていたグーちゃんの元にユーちゃんが現れ、男の子を突き飛ばして懲らしめました。姉妹はどちらかが困っていれば全力でお互いを守ったのでした。しかし設計事務所社長の父親が筋萎縮性側索硬化症で倒れました。

病状の進行する父親に、医者は色々な先端医療を提案します。みな高額で、しかも無効でした。母親は夜の仕事を始め、次第に生活は荒廃して行きました。ついに父親は亡くなり、母親は自殺しました。姉妹は帝都大付属病院も医者も嫌いになりました。姉妹は別々の親戚に引き取られ、いつか仕返しをすると誓いました。。。

【二 聖痕】警視庁の刑事犬養隼人と相棒の高千穂明日香は、犬養の娘紗耶香の見舞いに訪れました。犬養の浮気のために母親とは離婚しましたが、慢性腎不全で入院治療を続ける紗耶香の医療費は、犬養が負担していました。訪問すると、フィブロネクチン腎症で長期入院中の庄野祐樹が紗耶香に勉強を教えていました。

突然祐樹が退院する事になりました。迎えに来た母親は貧乏な様子でした。入院治療には高額な医療費がかかっていたのでした。ある日紗耶香のバイタルチェックをしていた看護師の岩井麻友子が口を滑らせました。祐樹が亡くなったと言うのでした。紗耶香と犬養は葬式に出席しました。紗耶香は遺体の首から下に痣があるのに気づきました。葬式で犬養は、警察官らしい男を見かけました。志度でした。犬養は彼に質問し、遺体の全身は痣だらけだったと志度は言いました。棒状の物を押し当てた痣でした。しかし死因は腎不全だったと彼は言いました。

祐樹の両親に痣を質すと、転んで出来たものだろうと言いました。しかも祐樹は自宅で亡くなっており、病院に搬送したりはしていませんでした。祐樹はその時苦しかった筈でした。志度は、両親が祐樹を監禁していたと言いました。しかし警察は自然死だと断定しました。犬養と志度は庄野家を訪問し、父親の喜一郎と母親の聡子を尋問しましたが、監禁の事実も痣もとぼけられました。周辺の聞き込みをしましたが、何も出て来ませんでした。

【三 怪僧】多摩川台公園で縊死死体が見つかりました。その遺体にも無数の痣が発見されたのでした。遺体は四ノ宮愛美45歳、末期のすい臓がんでした。夫の恵吾は、痣は初めて見たと言うのでした。犬養は、祐樹の身体に同じような痣があったと話し、恵吾は目を逸らしました。しかし犬養は床に落ちていた小冊子をふと取り上げようとし、恵吾は慌てて取り返そうとしたのでした。同行していた所轄の峰平が冊子を犬養の方に蹴り飛ばし、犬養は冊子を見ました。ナチュラリーという団体が発行していた健康雑誌でした。

ナチュラリーを主宰しているのは織田豊水という人物でした。犬養は庄野家を訪ね、同じ小冊子があるのを確かめました。妻の聡子は知らぬ存ぜぬを通しました。しかしネットで検索すると、その冊子はナチュラリー会員にだけ配布される物でした。両家は会員だったのでした。ネットで織田を確認しました。織田は容貌魁偉な異様な人物でした。ハンガリー国立大学医学部卒で、帰国後国立病院に勤めていたが、日本の医療技術に疑問を抱き、ナチュラリーを始めたと言う事でした。犬養は彼に会いに行きました。

事務長の毬谷貢が対応しました。来意を告げると織田が現れました。織田は庄野祐樹と四ノ宮愛実が会員であった事を認め、自分が会員に施しているのは、外的圧力による自然治癒力の増幅だと言って、野球のバットほどの根気棒を示しました。それに漢方薬を塗りこめて会員の体を痣が付くほど家族に押させるのだと言うのでした。犬養は歯嚙みをしました。それでは実行犯にはならなかったのでした。2人からはそれぞれ400万円近い治療費を受け取ったとも言いました。

明日香は織田の事を調べ、犬養に報告しました。織田の医師免許は偽造であり、病院勤務もしていなかったと言いました。それを庄野夫婦に告げましたが、夫婦は取り合いませんでした。肩書を持った帝都大付属病院の医者も何もしてくれなかったと言うのでした。誰が夫婦に織田を紹介したかについても黙秘しました。四ノ宮家も全く同様でした。。。

【四 教義】驚くべきニュースが犬養達にもたらされました。人気アイドルタレントの桜庭梨乃が子宮頸がんにかかって、帝都大附属病院で治療を受けましたが、改善せず、ナチュラリーの織田の治療で回復したと記者会見で話したのでした。それに呼応して与党大物議員の久我山も、ナチュラリー会員である事を発表しました。警視庁にはナチュラリー捜査中止の圧力がかかりました。明日香は、織田はロシア末期の宮廷に現れた怪僧ラスプーチンのような男だと感想を述べました。ナチュラリーは大評判を取り、会員希望が押し寄せました。娘の沙也加までが興味を示しました。。。

しかし桜庭梨乃に誹謗中傷と脅迫が集中し、ナチュラリーも同様の有様でした。そんな中、庄野聡子が自殺を図ります。桜庭梨乃と違って祐樹が死んだのは、庄野家が貧乏だったからだ、という中傷の手紙をもらったからでした。犬養は祐樹がナチュラリーに関わっていた事を誰に話したかと聞きましたが、喜一郎は誰にも話していないと言いました。四ノ宮家にも同様の手紙が届いていました。四ノ宮は手紙を見て、織田を襲うつもりだったと犬養に言いました。その2日後、なんと織田が殺されました。。。

【五 殉教】織田は撲殺されていました。事務長の毬谷は、何者かに深夜取り押さえられて縛られていました。しかも検死の結果、織田はコカイン中毒者でした。捜査が進む中、次第に織田の素性が明らかになって来ました。織田は実は。。。犬養の元に麻薬取締部の七尾が現れました。七尾は織田の事を良く知っていたのでした。。。織田がかつて入院したという病院を犬養は訪れ、織田の診療記録を入手しました。その記録にあった意外な人物の名前は。。。

犬養は、ナチュラリーを継承するという毬谷を訪問しました。犬養は彼女を連れて、帝都大付属病院を訪問しました。そこで犬養は意外な人物の元を訪れ、驚愕の推理を。。。

ここしばらくの中山先生の小説は、以前のような驚愕のどんでん返しが見られません。トリックは過去の作品のような2重3重の凝った造りではなく、取ってつけたような浅いものです。張ってあった伏線もいまいち回収されず、やはりお疲れが出ているのだなと推察します。しかし、一定のレベルを保っている所はやはり凄いなと思わせます。少しお休みになった方がよろしいのではという作品でした。




by rodolfo1 | 2021-06-19 02:26 | 小説 | Comments(0)
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