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平野啓一郎作「葬送 第一部 下」を読みました。

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平野啓一郎作「葬送 第一部 下」を読みました。

ドラクロワの元にショパンとサンド夫人の知人、マルリアニ夫人が訪れ、ショパンが青い顔で、ソランジュとクレザンジェが婚約したらしいと言いに来たと言いました。ショパンはこの不幸な決定を防げなかったと悔いていました。ドラクロワは自分の恋愛事情と引き比べてやるせない気持ちになりました。その記事が新聞に出た後、ヴィヨがドラクロワの家に上がり込みました。ヴィヨを見てドラクロワは喜びました。自分の心持を聞いてもらいたかったのでした。。。

そんな中、ショパンが咳の発作を起こして倒れました。ショパンの友人や弟子達が集まって看病しましたが、サンド夫人はノアンに居て留守でした。チャルトリスカ大公妃が手紙を書き、サンド夫人の帰宅を促しましたが、ソランジュの結婚話で忙しかった夫人は帰宅しませんでした。当時のサンド夫人のもう一つの悩みは養女のオーギュスティーヌの結婚でした。サンド夫人は彼女がモーリスと結婚すれば良いと思っていましたが、モーリスは一生彼女と添い遂げる事をためらいました。その内オーギュスティーヌは煮え切らないモーリスに愛想を尽かして、別の相手と結婚したいと言いました。

そこに割って入ったのがクレザンジェでした。彼はモーリスとオーギュスティーヌの間を取り持ってサンド夫人に貸しを作ろうと考えたのでした。というのもソランジュの持参金である、総額20万フランの価値があるオテル・ド・ナルボンヌには、5万フランの抵当がついていたのでした。その抵当をサンド夫人に押し付けようと、彼はモーリスを焚きつけ、モーリスは父親のデュドヴァン男爵に結婚の許しを得に行きますが、男爵に峻拒され、自分の形勢不利と見たクレザンジェに、翻意を促され、あっさり諦めました。クレザンジェは友達のルソーをオーギュスティーヌの結婚相手に紹介し。。。

サンド夫人は不機嫌でした。ソランジュが妊娠したのでした。田舎のノアンでは大したスキャンダルでした。結婚を急がねばならないと焦り、思わずクレザンジェの頼んだ、ノアンを抵当に入れてオテル・ド・ナルボンヌの抵当権を抹消するという案に賛成してしまいましたが、翌日弁護士に相談すると、一笑に付されました。サンド夫人の心に初めてクレザンジェへの疑いが芽生え、彼の頼みを断りました。。。

ショパンの容態は漸く回復に向かい、友人弟子達は、何故サンド夫人が戻らないのかと訝りました。この頃初めてドラクロワはショパンの発病を知りました。ドラクロワはショパンを見舞い、憔悴ぶりに驚きました。ショパンはあんな知らせを聞かされれば病気にもなると言い、秘書役のロズィエール嬢は、ソランジュが妊娠したからサンド夫人は結婚を焦っているのだと教えました。

ドラクロワはシャンロゼに静養に来ていました。彼と文通しながら、フォルジェ男爵夫人は憂鬱に襲われていました。たった一人で死んでいく自分に比べてドラクロワは死後も絵と名声が残るのでした。才気煥発で奔放なサンド夫人をうらやましく思いました。そうした事に何一つ気づかないドラクロワについ冷淡な態度を取ってしまいそうになりました。彼女は芸術に嫉妬していたのでした。。。

ソランジュとクレザンジェはごく内輪だけの結婚式を挙げました。ショパンは病気の為に欠席し、簡単に結婚を祝福する手紙をサンド夫人に寄越しました。サンド夫人はショパンはパリで友人達と自分を嘲っているのではないかと邪推しました。自分がショパンに頼られなかったのはショパンの冷淡さの表れだと思いました。

サンド夫人一家はクレザンジェと共にパリに戻り、ショパンに会いました。しかし二人とも相手に対して熱心になれませんでした。ショパンは、サンド夫人がショパンの親友の死をショパンに隠していた事に不信感を持ちました。そして、クレザンジェを巡って生じたサンド夫人一家と自分の溝を強く意識しました。ショパンは友人のフランショームだけにサンド夫人の愚痴を言いました。しかしショパンは、幸せの絶頂である筈のサンド夫人一家に一抹の違和感を感じ。。。

サンド夫人は募る心労に苛まれていました。モーリスはオーギュスティーヌとルソーの婚約を非難して荒れ、対してサンド夫人は、デュドヴァン男爵に叱責された話を持ち出しました。ソランジュは衆人環視の中、オーギュスティーヌの10万フランの持参金に引き比べて自分の持参金についての不満を述べ、サンド夫人に窘められました。しかしクレザンジェがその尻馬に乗り。。。

クレザンジェ夫妻は、とりあえずオーギュスティーヌとルソーの結婚を破談にしようとし、モーリスをまた焚きつけました。その尻馬に乗ったモーリスは暴れ、ソランジュはオーギュスティーヌを支離滅裂に責め、サンド夫人にまた窘められました。クレザンジェは焦り、ルソーにオーギュスティーヌとモーリスの不倫を告げる匿名の手紙を送り、それを真に受けたルソーはオーギュスティーヌを非難する手紙をサンド夫人に送り、激昂したサンド夫人は二人の破談を宣告しました。しかしクレザンジェは、債権者達に押しかけられてそれどころではありませんでした。。。

サンド夫人は、あの匿名の手紙を含めて今回の騒動にはクレザンジェ夫婦が関わっていると見抜きました。クレザンジェは自分の借金の事を打ち明けて援助を乞いましたが受け入れられませんでした。怒ったクレザンジェ達は館で揉め事を起こし、サンド夫人に叱責され、暴力沙汰を起こして止めに入ったサンド夫人を殴りつけ、夫妻は館を去りました。今回の顛末を、ついにサンド夫人はショパンに知らせる事が出来ませんでした。。。

しかしソランジュはショパンに手紙を寄越し、自分達のパリ移動にショパンの馬車を貸せ、ついてはサンド夫人にその旨を手紙で伝えてくれと頼みました。自分かサンド夫人かをショパンに選ばせようとしたのでした。ショパンはサンド夫人にその手紙を書き、サンド夫人からは憤激の返事が来ました。その返事にうんざりしたショパンは今後を相談しようとドラクロワを頼り、長年サンド一家の喧嘩に巻き込まれている実情を訴え、家族の輪に入れないのは寂しいと言いました。結局ショパンはサンド夫人の意向に背き、サンド夫人から別れを告げられました。。。

多くの人はショパンに同情し、特にイギリス人富豪のスターリング嬢は熱心にショパンを擁護しました。ドラクロワの下院図書室の壁画はついに完成し、その巨大な壁画が奪った彼自身の命と時間に彼は怯えました。。。

物語はようやく進み始め、さぞかし読者もひと息ついた事でしょう。まだまだ冗長な部分も多いですが、後半に期待したいと思いました。




by rodolfo1 | 2022-01-25 02:07 | 小説 | Comments(0)
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