2018年 08月 29日 ( 1 )

皆川博子作「聖餐城」を読みました。

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皆川博子作「聖餐城」を読みました。舞台は神聖ローマ帝国が衰退しようとする1
7世紀に起きた30年戦争です。カソリックとプロテスタントに分かれて欧州中が戦
争に加わります。

主要な登場人物の一人はアディです。馬の胎に縫い込まれていて顔だけ出してい
たところを酒保商人に拾われ、軍隊について回りながら、略奪まがいの仕事を手
伝っています。

そのアディに出会うのがイシュア・コーヘンです。ウィーン皇帝に使える宮廷ユ
ダヤ人の三男であった彼は身代金目的で誘拐され、父親たちの思惑によって地下
牢に幽閉され、やっとの思いで脱出しますが、脱出に際して指先の爪はすべて欠
け落ち、白髪となって、家族に深い恨みを抱きます。錬金術と占星術を身につ
け、兄のシムションやバアルを凌いで一族の稼ぎ頭として君臨するようになります。

一方アディはローゼンブルグの貴族、ローゼンミュラーに取り立てられ、彼らと
共に皇帝に取り入り、頭角を現していくヴァレンシュタイン伯爵とともに出世し
て行きます。

アディは、ふとしたことから蔑まれている処刑人の娘と恋仲に落ちます。差別の
為に結婚できない二人は別れてしまうのですが、アディはある望みを抱きます。
自分が出世すれば、旧来の仕来りを変え、娘と結ばれるのではないかと。アディ
はその後、ずっとその思いを抱いて生きていくのです。

さて、聖餐城とはユダヤ人が隠している秘密だと思われています。そこは三代前
の皇帝ルドルフ三世ゆかりの城であり、最も強力な錬金術師が配置され、ルドル
フの亡霊が出没すると言われています。しかもその城には、約700年前に作られ
た青銅の首がおさめられ、あらゆる質問に答えることができたと言われていまし
た。イシュアはその謎を説こうと、あらゆる文献を漁っています。

次第にハプスブルグはプロテスタントに押し込まれ、アディたちはプラハの防衛
任務につきます。そこで軍の実権を握ったアディは、プラハ市民にある提案を行
います。戦いは30年を経て、次第に膠着状態になり、ついに終戦を迎えます。

その頃イギリスに渡り、クロムウェルに取り入ったシムションは、ついにユダヤ
人のイギリス移民を果たすかに思えたのですが。。。。。

なんとも壮大な歴史絵巻です。多くの伏線が巧みに回収され、30年に渡る戦いの
経緯が一冊の本に詰まっているのは作家のものすごい力量の賜物だと思いました。
一読するべき一冊ではないかと思いました。


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by rodolfo1 | 2018-08-29 02:29 | 小説 | Comments(0)