2018年 09月 17日 ( 1 )

中澤日菜子作「ニュータウンクロニクル」を読みました。

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中澤日菜子作「ニュータウンクロニクル」を読みました。とあるニュータウン
(多摩ニュータウンがモデルなんだそうです。)の1971年から2021年までの
お話です。そのニュータウンが始まってから、次第に高齢化、老朽化していく
様を入れ子式に描いた作品です。物語は10年ごとに起こる6つの話で出来てい
ます。

第一話は、ニュータウンで働く地方公務員、小島健児の話です。ニュータウン
で暮らす主婦、袴田春子とその娘の理恵子と知り会います。彼女は未来を拓く
会、というニュータウンの住民集会のような会で活動しています。何故か理恵
子になつかれてしまった健児は、次第にその会に参加するようになりますが、
はやらない八百屋を営む叔父の善行にうとまれ、会への参加を役所に密告され
てしまい、会からも、旧住民との軋轢の象徴のような言われ方をされ、会から
距離を置こうとしますが、折柄喘息の発作を起こした理恵子を春子と病院に連
れて行く羽目になり。。。

第二話はその10年後。舞台は学校です。5年生の小川文子はニュータウンに住
む、どこにでもいそうな女の子です。その学校に一人の転校生が転校して来ま
す。風変わりなその子はみんなに馴染みませんが、文子だけは違いました。と
ある事件の後、転校生の家に出入りするようになった文子は、早熟なその子に
男女関係について書いた雑誌を貸してもらい、学校にまで持っていくのですが
、次第に疎遠になりつつあったかっての友達にその本を暴かれてしまい、事件
が起こります。

第三話はその10年後、主役はなんとあの嫌味な善行です。八百屋をたたんだ彼
は、そのあとにプールバーを開くのですが、この店があたります。店も儲かり
ますが、善行自身もバブルに乗っかり、株取引などで巨万の富を築くかに思わ
れたのですが、店をまかせていた妻は、当時流行りの不倫ドラマにはまり、店
にそのドラマのロケが来たことからとある俳優と知り合います。次第に深みに
はまっていった妻は。。。。

第四話は三話の続きです。善行の息子は、バブルの崩壊とともにほとんどアル中
となった父親と二人暮らしをしています。バーはつぶれ、息子はろくろく学校に
も行かず、父親の介護以外は引きこもり生活を続ける息子の元に、あの健児が良
い話を持って来ます。もとバーの一階を貸さないか、というのです。染物工房を
起業したい女性がいる、というのです。トントン拍子に話は決まり、一階部分で
工房が始まります。ひょんなことからその仕事を手伝う羽目になった息子でした
が、女性の意外な正体が知れ。。。。

第五話はまたその10年後、第二話の登場人物たちが同窓会を開きます。その時
既に廃校となっていた小学校に夜間密かに侵入して飲み会を開こうと三人の元生
徒がたくらみます。まんまと侵入し、密かに語り合う元生徒でしたが、語る悩み
は、いかにも40代男性の悩みそのものです。

第六話に登場するのは、第一話の登場人物、袴田春子とその娘理恵子です。50年
後、かつてのニュータウンはすっかり寂れ、高齢化が進んでいます。バリアハー
ドでエレベーターもないニュータウンには誰も帰って来なくなったのです。春子
が独居する部屋には古いものがあふれかえっており、それを整理に理恵子が帰っ
て来ます。理恵子の生活にも様々な葛藤があり、春子の介護も真近に思えたので
すが、ニュータウンで見たものは、春子の面目躍如といった意外なものでした。
最後に健児が再び登場し、ニュータウンにあるかもしれない明るい未来を提示し
て物語は終わります。

大変きれいにまとまっていて読みやすい小説でした。作者は劇作家出身だとか。
さすがにそつがありません。ただ、難を言えば、すべてがあまりに容易にまと
まってしまっており、食い足りない印象があります。しかし小説としては大変
良く出来ており、将来が期待される作家さんだったと思いました。




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by rodolfo1 | 2018-09-17 02:26 | 小説 | Comments(0)